第45話 勇者と復讐者

 農村跡地でにらみ合いをする勇者とグリフォン


「えーと・・・どこかで会いましたっけ?」


「我の姿に見覚えが無くても、お前が滅ぼした鳥類の巣の事は覚えていよう!」


「鳥類の巣って・・・あの鳥モンスターの巣の事ですか?えーと・・・こんな大きな魔物見逃さないと思うんだけど、良く探索したし」


「そうだ!久しぶりだな人間よ。この姿に見覚えが無いのも無理はない、キサマを殺すために雑魚共を食らい続けて力を蓄えたのだ。同胞達の敵、これからキサマを八つ裂きにしてくれる!」


「魔物もレベルアップするんだなぁ」


 周りで見守っていたギャラリーの一人のハイエナのボスが勇者から視線をそらし真理とポチィを見て口を開いた


「鳥共の巣を襲撃したグリフォンの復讐相手はお前達の事だったのか・・・・」


「あたしは関係ないわ。ゆうとが一人の時にやった事でしょ」


「ワゥ?」


 ポチィーは首をかしげている。ボスは真理の言葉に驚愕した


「ヤツ一人?巣の樽や壺など壊せるものは全て叩き壊され、逃げた者以外は皆殺し、死骸も含めた物品の略奪まで行われた、あの惨劇がヤツ一人!?」


「そんな事やってたのね・・・まあ、ここに来る時も魔物が出ないってごねてたから別に驚かないけど」


「なんてことだ・・・盗賊紛いの集団の仕業だと思ってたのに」


 取り巻きのハイエナの一人が頭を抱えるボスに提案する


「ボス!グリフォンが居る今がチャンスです!隙を見て殺っちまいましょう!」


「ガルルル」


 ポチィーは殺気に反応し魔物達を威嚇した。殺気立つハイエナたちをボスが止める


「いや待て、奴らには俺の命と引き換えにお前達の命は助けてもらうように話をつけてある、邪魔をするな!」


「ボスの命を!?なぜです!」


「俺達の群れは弱い、グリフォンが居なくとも他の魔族に滅ぼされていただろう。より強いリーダーが必要だ」


「リーダーって、なにもあんな奴に頼まなくても」


「ヤツは俺達が一番必要としている物を持っているかもしれないからな」


「必要な物・・・肉ですか?」


「バカヤロウ!」


 ボスの攻撃!部下に10ダメージあたえた


「痛て」


「俺達に必要な物それは・・・獲物を狩る執念だ」


 しぶとい魔物はボスの言葉にハッとして呟いた


「そうか!オレを追い回していた時に見せた人間とは思えない程の狩猟本能。確かに奴なら」


 勇者とにらみ合いをしていたグリフォンは高らかに叫んだ


「皆の者、我はこの人間との一騎打ちを所望する!大人しく下がっていれば危害は加えないと約束しよう!」


「一騎打ちですか、いいでしょう」


 勇者は一騎打ちを承諾した。グリフォンは不敵に笑っている


「ふ、迷わずこちらの提案を受け入れるとは舐められたものよ。さあ、今こそ雌雄を決し・・・」


 勇者は後ろを向いて言い放った


「すみませーん、空飛ぶ相手には真理さんの魔法が有効でしょうから、後はお願いします」


「クエェ!?」


 動揺するグリフォンにむかって真理が躍り出る


「OK任せてよ。さあ、受けて立ちましょうか鳥野郎!」


 グリフォンは勇者に叫んだ


「ちょっと待てぇ!戦う相手はそこの男に決まっているだろうが!!」


「えー、戦う人をパーティメンバーの中から選べないんですか?」


「我の復讐相手はキサマだ!キサマが戦わなくてどうする!」


「あー、そんなイベントか・・・対空戦の装備を持ってないけど、どうしよう・・・弓矢買っておけばよかった」


 ハイエナ達はざわついている


「アイツ、自分は下がって女を決闘行かせたぞ・・・」


「さっきの戦いで女の盾になった男のセリフとは思えねぇ・・・」


「ボス、本当にヤツに俺達をたくすんですか?」


 ボスは目をそらしながら言った


「う、うう・・・だ、大丈夫…なはずだ」


 ざわつくハイエナ達に真理は笑いかけた


「ふふふ、約束を反故にしたら誰も生きて返さないわよぉ」


「わ、分かっとるわ!」


 真理はグリフォンに提案した


「はいはーい、ゆうとが一騎打ちするのはいいけど装備を整える時間をちょうだい」


「あ、僕からもお願いします」


 グリフォンはキレ気味だったが、渋々了承した


「3分やろう!逃げたら皆殺しだからな!」


「はい」


 勇者達は作戦会議をはじめた

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