第44話 勇者よ!こんなに大きくなりましたよ

 ボスが咆哮しダンジョンが揺れた


「ガタガタガタ・・・」


「流石ボスですね、声でこんな揺れが起きるなんて」


「叫んだ後もまだ揺れてない?」


「貴様ら!いい加減ふざけるのをやめないと・・・」


 怒りに満ちていたボスだったが、何かを察したのか静かに天井を見上げた


「ガタ・・・」


「止まった」


 しばらく続いた揺れが収まると、また新たな揺れが発生した。ボスの咆哮と揺れは関係なかったようだ


「ガタガタガタ!」


「また揺れた、何の揺れなんでしょうねコレ?」


 ボスの顔が青くなり小声でつぶやいた


「コイツはまさか・・・・ヤツに見つかったのか」


「何よ、ヤツって?」


「知ってたんじゃないのかキサマ、あの復讐の為に同胞に手をかけいるグリフォンの事を」


「グリフォン?あんた勇者に殺されない為に地下に逃げてたんじゃないの?」


「違うわ!誰が人間なんぞ恐れるか!」


 勇者はボスのセリフにキョトンとした表情で言った


「僕達に怯えて部下の皆さんは逃げて行きましたが」


「ちょっと!僕達ってあたしもアンタと一緒にしないでよ」


「ヤツの前ではお前たちなど足元にも及ばんわ!!聞かせてやろう、ヤツの恐ろしさを、そして奴の怨念の正体を・・・」


 真理は棒を構える


「知らないわよそんな事、ライニ・・・」


「まっ待て待て!!今は争っている場合ではない!協力しよう、俺と共にあのグリフォンを討とうではないか!」


 勇者は武器を構えた


「いいえ、僕の経験値になっていただきます」


「待て!そうだ、ヤツを倒したら俺の命をやろう。俺を倒し、心臓に埋め込まれた紋章を手に入れれば群れの仲間はお主たちお前たちに従う!だから群れの仲間の命は助けてくれ!!」


 勇者達の手が止まった


「つまり、そういうイベントですか。このクエストを受ければモンスターを仲間にできるという」


「ふーん、あの犬モドキ共、戦力としては使えなさそうだけど労働力になら・・・このダンジョンあんた達が掘ったのよね?」


 真理の質問にボスは答えた


「そうだ、土を掘り、掘った土を圧縮して強固なブロックにし、壁に使って補強して作ったのだ」


「あ、それ便利。良い工房ができそうね」


「RPGのダンジョンって地下にあることが多いですけど、掘った土はそうやって再利用してたんですね。しかしアマンダさんのクエストはどうしましょう」


「それは交渉次第でどうにでもなるんじゃない?あっちだって人手は欲しいでしょうし。やりましょ、ゆうと。裏切ったら狩ればいいだけだし」


「悩みどころですけど・・・はい、やりましょう」


「おお!やってくれるか、では直ぐにいこう!ついて来い!!・・・ほら、そこの端で震えてるオマエもだ!」


「え、オレの事ですか?こいつ等を頼るの?」


「つべこべ言わずついて来い!」


「ぎょッ御意ぃ!」


 ボスは部屋の出口を穴に入るネズミの様に這って行った。その後をしぶとく生き残った魔物がついて行った


「うわ、あの巨体でよく通れるわね」


「まあ、通れないとこの部屋に入れないですし」


 無事に地上に出た勇者達が見たものは・・・


「うわああ!」


「キエェェ!大人しく我に食われて糧になるが良いハイエナ共よ!」


 空飛ぶボスよりも巨大なグリフォンに追われ、逃げ惑う魔物達と・・・


「ガウ!ガウ!」


 ・・・その魔物達を攻撃し、仲間を殺された復讐に燃えるポチィーの姿だった


「うわわ!なんだこの犬!?」


「ワンワン!ガウゥ」


「ポチィー、そんなの齧ってないで、こっち来なさい」


「ワンワン」


 ポチィーは真理の声に反応し、真理の元まで走って行った


「クゥーン・・・」


「おーよしよし」


「キシャアアァァアアア!!」


 グリフォンは魔物達を次々と倒しながら何か吠えている


「力を…もっと力を!あの人間を殺せるだけの力をぉぉぉ!・・・・あ!キサマ!!」


「え、僕ですか?」


 グリフォンと勇者の目が合った、グリフォンは勇者の元まで降りて睨みつけた


「やっと見つけたぞ人間!我が一族の敵め!」


「えーと・・・どこかで会いましたっけ?」

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