第41話 ユーシャ・ハザード

 農村跡地の地下の魔物のアジトを探索していた勇者は中の魔物を追い、略奪品置き場を見つけた


「あ~…うぅ・・・」


 勇者は ”ここやけに荷物がいっぱいあるけど倉庫かな?” と思いながら略奪品置き場の中に入った。一方、勇者が追跡していた魔物は・・・


「ガタッ・・・」


 ”な、何だったんだ今のは・・・とっさに樽の中に隠れて正解だったぜ” と息をひそめて部屋の奥にある樽の中に隠れていた


「うぅ~…」


 魔物は樽のすき間から勇者が入って来たのを見て ”あの野郎中に入ってきやがった!” と動揺しながら恐怖に耐えている。勇者は魔物から離れている樽を持ち上げ


「うがぁ!」


 投げた


「ガタン!」


 勇者は投げた樽を見て ”あれ、やっぱり壊れないか、叩いて壊すしかないかな・・・” と思い、樽を棍棒で攻撃した


「ガン!ガン!」


 樽に隠れている魔物はその様子を見て ”アイツ!?俺を探してるのか!ヤバイ・・・どうにかしてここから離れないと、ああ混沌に連なる悪霊、悪魔、邪神様、魔王様!!どうかお助けを!!” と祈りながらも動けないでいる


「ガバン!」


 勇者は樽を破壊し大量の薬草を見つけ ”おお、薬草だ!これでMPを消費せずにHPを回復できる。でも傷があるわけじゃないし、塗って回復できないよな・・・食べるしかないか” と判断し薬草を食べた


「ムシャムシャ・・・」


 魔物は薬草を食べる勇者を見て ”えぇー、あのゾンビ草食なの!?どんだけ型破りなんだアイツ・・・” と思いながら驚愕した


「やく・・・うま・・・」


 勇者は体力を10回復した、十分な食事をしMPの回復速度も上がり ”ふう、お腹いっぱいだ、もう食えない。しかし薬草って食べるとMPの回復にも関わるのか、食事って大事だな” と満足し、次の樽を攻撃した


「ガン!ガン!」


 が、その中身は・・・勇者の常識を覆すものだった


「ガバン!…ジャラジャラジャラ」


 勇者は3000シルバー見つけた


 壊した樽からこぼれ落ちる銀貨を見て勇者は ”こ、これは新たな通貨!?シルバーってゴールドの下の単価なのかな・・・1ゴールドって何シルバーなんだろ・・・” と驚いた


「うぅ・・・うお!うう!?」


 驚く勇者を見て魔物は ”あのゾンビ、銀貨を見てかなり動揺しているな・・・・そうか!ゾンビもアンデット、つまり銀が弱点って事か!” と考えた


「キョロキョロ・・・」


 魔物は樽の中から見える範囲で ”どこだ、どこかにヤツを倒す銀製品はないのか!” と探し


「ギロ」


 魔物は大きい銀の燭台を見つけ ”あった!あの燭台なら槍として使える!” と思い、勇者にバレない様にこっそりと樽から出た


「うぅ~・・・」


 勇者は ”どうしよう、とりあえず拾っておくか” と思い銀貨の前でしゃがみゴソゴソと袋を取り出したが魔物からは見えない


「こっち向くんじゃねぇぞぉ、ゾンビ野郎・・・」


 魔物は燭台を握りしめ、叫びながらジャンプし跳びかかった!


「食らいやがれ、この化け物!!」


「うお?・・・」


 勇者が魔物に振り向く、ゾンビと思っている存在が銀貨を袋に入れてる光景が魔物の目に入り突っ込まずにはいられなかった


「拾うのかよ、銀!?」


「ゆうとぁー、居る―?」


 不意に声がしてそちらの方へ向くと、猫耳の少女が中に入って来ていた、その少女と魔物の目が合った


「あ」


 魔物は死の間際のゆっくりと時間が流れる様な感覚になり”コイツが襲撃者か、やべ、オレ終わる”と空中で思考した


「あ、ライニール!」


 真理は電撃魔法を魔物に向かって放った


「ちぃい!!」


「バチバチバチ!」


 魔物は持っていた銀の燭台を投げて電撃をそらした、そのまま真理を突き飛ばし全力で逃げる


「うわ!」


「ハハハ!銀は電気を遠しやすいんだ!ざまあみろ!ははははは!」


 魔物は”やべぇ!こんなに頭が回ったの生まれて初めてだ、魔王様ありがとぉ~~ッ、祈った甲斐がありました!”と思いながら走り去った。


「痛たたた…しぶとい奴ね。あ、ゆうとは?」


 突き飛ばされた真理は身体を起こし、ゆうとを探した


「うぅ~・・・……」


「プスプス…プス・・・」


 勇者は電撃の直撃を受けて倒れている。30ダメージ


「凄い顔色だけど生きてるわよね・・・ホイリン」


 真理は呪文を唱え勇者を27回復した


「うがぁ~・・・」


「うわ、何よその顔ゾンビみたい。はい、これ飲んで解毒して」


「ヴぁい」


 勇者は真理から鍋を受け取り、中に入っていた薬を飲んだ、勇者を侵す毒は消え去った


「ふう、助かりました。でも真理さん上で待ってたはずじゃ?」


「何かが凄い勢いで走っていった気配がしたから、毒霧が消えるころを見計らって足跡を追って来たのよ」


「ハハハ、そういえば追跡は得意でしたね。ポチィーは?」


「毒に臭いがダメみたいで、ついて来なかったわ」


「そうですか、よいしょっと」


 勇者は鍋を装備し起ち上がった


「それ被るの?、ばちぃ」


「ダンジョンの中ですからね、いつ敵に襲われるか分かんないし装備はしておかないと」


「それにしても何ここ、倉庫か何か?」


「みたいですね、持てる物だけ持って帰って装備を整えましょうか」


「却下よ」


 真理は魔物が投げて地面に刺さった銀の燭台を引き抜いた


「あの犬モドキ、あたしを突き飛ばしてタダで済ませるもんですか。「ふふふ・・・銀は電気をよく通すね、今度はその身で味わってもらいましょうか・・・」


 真理は不敵な笑みを浮かべている


「えー、でも一度帰ったほうが・・・」


「アマンダから受けた依頼は本当は威力偵察なんでしょ、全滅させずに帰ったら何かと理由をつけて、ここを自由にする条件を反故にされかねないわ」


「うーん…あり得る話かもしれませんけど、アイテムが勿体ないし・・・」


「つべこべ言わない!ここのアイテムは町を作るためのイベントアイテムだとでも思いなさい」


「なるほど!確かに持ち帰られる量じゃありませんもんね。いやー、僕としたことが恥ずかしい」


 本気で言う勇者の姿に真理は頭を抱えた


「アンタはホント・・・まあいいわ、ゆうと行くわよ」


「はい」

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