第37話 勇者達は止められない

 道具屋を出て北門に向かった勇者達、北門を出ようとした勇者達は門番に話しかけた


「すみません、森に行きたいんですけど」


「勇者さま今日もお疲れ様です。通行手形を確認します」


「はい。あ、真理さん手形持ってます?」


「持ってないわよそんな物」


 門番が真理の一言に驚き困った顔をする


「持ってらっしゃらないんですか!?それは困りましたね・・・」


「僕の手形で通すことは出来ないんですか?」


「それは出来ません、規則ですので。直ぐに上へ連絡し手配しますので待ってもらえませんか」


 真理は不機嫌そうだ


「お役所仕事ね、まったく」


「いや、本物の公務員なんで・・・勘弁してください」


 申し訳なさそうにしている門番に勇者は慰めるように言った


「いいえ、キーアイテムを忘れたら普通、怒って連打で話しかけても同じセルフしか言わないですから、良い対応だと思いますよ」


「そんな門番居るんですか」


「はい、しかもそのセリフが無駄に長かったりするんですよ・・・そう感じるだけかもしれませんが」


「それは、苦労なさったでしょうねぇ・・・」


 真理はウンザリしたように言った


「ゆうと、こっそり出ちゃいましょうか」


「そんな事できるんですか」


「ちょくちょく出てたわよ、材料を集めに」


 門番は小声で話しかけてきた


「個人的には早く魔物を何とかしてもらいたいですが、そういう事は聞こえない所で言ってくださいよ」


「みぃ・・・みっ…みっみぃ!」


 何か小さな物体が走って来て跳ねて目の前に着地した


「みやぁ~と!お届け物ですニャン」


「アマンダさん!?また猫になったんですか」


「使い魔に一時的に憑依してるだけニャ、魔女の基本スキルにゃぞ」


「え、この猫アマンダなの…今更何の用よコイツめ」


 真理は猫のほっぺを引っ張った


「痛い痛い痛にゃい!今日は届け物が背中にぃ~」


 勇者は猫がしゃべってる事を通訳した


「背中の物を届けに来たみたいですよ真理さん」


「背中ぁ?何か背負ってるわね…どれどれぇ」


 猫が背中に背負っていた筒をとって中身を確認した、そこには二つの書類が入っていた


「通行手形ですね」


「これがそうなのね。で、もう一枚は…地図ね、この印は何なのかしら」


 地図には丸く印がしてある場所があった。猫は腕を組み二本足で立ちながら説明する


「うむ、実はユーシャ達にはそこに行ってもらいたいのニャ」


「ここに何があるんです?」


「他の使い魔を偵察に回した所、郊外の農村跡地が荒らされたまま残っていたみたいでニャ、そこに威力偵察に出てもにゃいたいのにゃ」


「威力偵察・・・って事はそこのモンスターがどの程度の強さか確かめてほしいと言う事ですか」


「うみゅ、見たところ大した魔物は居にゃいが罠かもしれにゃいから、どんな強さの魔物が周りに居るか確かめてほしいにゃ。制圧が可能ならそこを前線基地にする予定にゃから攻略が楽ににゃるぞ!」


 勇者は楽しそうに笑って真理に通訳した


「やっと公式クエストが来ましたか!引き受けましょう。真理さん、このエリアに前線基地を作りたいから魔物を殲滅して欲しいそうです」


「ワオ、過激ねぇ、腕が鳴るわぁ…ふふふ」


 真理は武者震いしている。猫は冷や汗をかいて勇者に吠えた


「こら!勇者ぁ!曲解して伝えるんじゃないニャン!」


「でも倒してしまっても構わないんでしょう?」


「そ、それは可能なら倒してもらった方がいいにゃが・・・」


「はいはーい、成功報酬とかどうなってんの?あたし自分の工房とか欲しいからその土地をある程度自由に使わせて欲しいんだけど」


「う、うん、まあ、軍の邪魔にならない程度なら良いニャよ」


「軍の邪魔にならなければいいそうですよ真理さん」


「え!ホントに!やった、どんな工房にしようかしら」


 猫はため息をつきながら話を続けた


「まあ、工房の一つくらい構わにゃいにゃろう。ユーシャ、使い魔はこの街にいっぱい放っているかりゃ用がある時は話しかけてみるにゃ。このネコと同じ首輪が目印にゃ」


「わかりました、どうな町を作りましょうか真理さん」


「町!?ちょっと何言ってるニャ?」


 勇者の言葉に猫は動揺したが勇者達は話に盛り上がって気づかない


「町かぁ…どんな名前にするゆうと?キサラギタウンとか」


「はい、それで良いです」


「何よ張り合いがないわね、ちゃんと考えてよ。はいこれ通行手形」


「は!確認しました。行ってらっしゃいませ!」


 門番は通行手形を確認し、敬礼しながら雑談する勇者達を通し見送った


「町の名前なんて、どうせ初めはどんな名前にするかワクワクするんですが、数々の案をいいえと答え続けて、やっと自分の番が来た頃にはどうでもよくなって結局適当な名前になるんですから何だって良いんですよ」


「ちょ、ちょっと待つにゃ!」


 猫の声は勇者に届かなかった


「えー、なにそれ。キサラギタウンは冗談だからちゃんと案出しなさいよね」


「はい、一応考えておきます」


 勇者達は勝手に盛り上がって行ってしまった・・・。残された猫を門番は見つめた


「ねこ…猫かぁ・・・でも中身はアマンダ様らしいし・・・・・通行手形、もってらっしゃいます?」


 門番の言葉に猫のままでは言葉が通じないと知りながらアマンダは叫んだ


「減給は覚悟しろよ、このマニュアル人間が!」

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