第34話 勇者面接

 眠ってしまったところを女神に導かれてしまった勇者達。今まさに真理が真の勇者かどうか見極めるための面接が始まろうとしていた!


「それでは面接を始めます。準備はよろしいですかマリーよ」


「んー、僕は何をすればいいんだろ・・・」


 勇者は女神が用意した席に座っている・・・つもりでいる、精神体なので座りたくても座れないのだ。真理は面接官に向かい合うようにぽつんと置かれたパイプ椅子に座っている・・・気がする


「もう何でもいいから始めちゃってよ、めんどくさいから」


「良い覚悟です。では第一問!」


 女神の後光が七色に光った。真理は呆れている


「第一問ってクイズ番組じゃないんだから…」


「村人に薬草を10本取ってきてくれと頼まれました。しかし、他にもあなたに頼みたい事が有る人間がいっぱい居ます。貴女はどうしますか?」


「先に頼んできた人から順番に解決していけばいいんじゃないの?」


「ブブー」


 天使がブブーっとラッパを吹いて去っていった。女神は”あちゃー”といった感じで顔を押さえた


「こんな初歩の問題から躓くとは・・・勇者ゆうと、答えを」


「あ、はい、まず全てのクエスト内容を聞いてから、まとめてクリアできそうなのを複数受けて一気に解決します。そうすれば何度もダンジョンを往復しなくていいですから」


「正解!さすが私が選んだ勇者。多くの人を迅速に救うには、準備に時間をかける事も必要です!目先の事だけに囚われてはいけません」


「カンカンカラン」


 今度は天使が光ながらベルを鳴らしそして去って行った。勇者は”天使も大変なんだあなぁ”と思いながら天使が去って行った場所を見つめた。真理は屈辱を受けたような感じだ


「くっ、ふざけた態度と裏腹に内容は意外と真面目ね・・・気を引き締めて行かないと」


「第二問!魔物が町娘をさらっていきました、ダンジョンの場所は判明しています貴女ならどうしますか?」


「えーと、それって洞窟とか古代の塔とか閉鎖的な空間?」


「ええ、そうですね」


「ふ、なら簡単ね。ダンジョンにガスを流して人質ごと痺れさせるわ、ガスでも足りなかっらた電撃を食らわせる!邪魔者を排除してからゆっくり人質を運び出せばいいわ、誘拐の基本よ!」


「良い回答です。だが惜しい!勇者ゆうと!」


 勇者は淡々と答えた


「ダンジョン入ったらモンスターを倒しつつ探索します。ボスの部屋を見つけても直ぐには入らず一番最後に回します、ボスを倒すのはダンジョンを調べ尽くした後です」


「正解!」


「カンカンカラン」


 勇者の答えに真理は不服な様で取り乱した


「いやいや、何でよ!」


「マリーよ、ガスという発想はよかったのですが、魔物によっては耐性がありますのでダンジョンによっては有効ではありません。息をしないストーンゴーレムにガスが効くと思いますか?」


「ぐぬぬ…人間に有効だからといって魔物に通じるとは限らないか・・・うかつだったわ」


 そして女神はどこからか取り出した眼鏡を掛けそれをくいっと持ち上げる動作をして続けてこう言った


「そして一番重要な事なのですが人間をさらうのは人質にするためという考えは危険です。魔物が人間をさらう場合その人間に利用価値があるから、もしその町娘を魔物に変えて返した後に混乱を引き起こす作戦だったらどうするんです?なぜさらったのかダンジョンで手掛かりを出来るだけ調べるのは必須です」


「な、なるほど」


「さらわれたのが町娘と言うのもポイントですね、女性相手だと油断しやすくて都会は人口も多く他人に無関心ですから。稀なケースとして強大な魔力を持った巫女と言う事もあり得ます。その場合は何かの儀式に使われる前に迅速に対処しなければなりません。まあ、そういう女性は人里離れた山や村、神殿に居る事が多いですのでご参考に」


 真理はしばらく黙った後に勇者にこう聞いた


「ねぇゆうと、アンタそこまで考えてた?」


「いいえ、ボスを倒してダンジョンが探索できなくなったりするのが嫌なので。アイテムを取りのがしたら嫌でしょう」


「やっぱり…」


 真理は勇者の答えに頭を抱えている。女神は真理に笑顔で答えた


「女神としてはどのような経緯だろうと結果的に救われればOKなので問題ありません。他の勇者も手段も性格も目的も千差万別ですが大体こんな感じですよ」


 真理は唖然とし一言呟いた


「天然って怖いわー…」


「故に選ばれしものなのです。そしてマリーよ、最後の質問ですが…貴女は本来勇者ではありません、それでも貴女はこの世界で勇者として生きる事を望みますか?」


 女神の質問に真理はキョトンとして聞き返す


「どういうこと?」


「もし貴女が望むなら元の世界で生まれ変われる様手配します。記憶などは残らず別の人間として一からのやり直しになるでしょうが」


 真理はしばらく考えた後に答えた


「やるわ勇者ってやつを。魔法って言うのに憧れはあったし、この馬鹿といると楽しそうだしね」


「はい、宜しくお願いしますね真理さん」


 勇者の答えは素っ気ない淡々としたものだった。女神は席を立ちこう言った


「了承しました、では頼みましたよ勇者マリー」


 真理は勇者のマネをしたように答えた


「はい」


「では面接はこれにて終了します!」


「カチン」


 電気が消えたように周りが真っ暗になり勇者達の意識は消えて行った・・・

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