第33話 やっぱり暇なんですか?

 今日はもう休もうと兵舎に向かった勇者達。勇者は自分の部屋に真理と共に入った


「一度来たから知ってるけど、狭いわね」


「兵士がただ寝るだけの部屋って感じですよね。圧迫感があるのはベットの位置のせいでしょうけど」


 勇者達は部屋を余計に狭く感じさせる原因、部屋の中央に陣取る二段ベットを見つめた。恐らく兵士の装備や私物を入れるためであろうタンスと鍵付きの箱がベットの両側を挟むように置いてある


「何でベットを真ん中に置くのよ、普通端に置くでしょうに」


「明日レイアウトを変えましょうか。今の僕のステータスなら簡単に持ち上げられそうですし。よし、装備は無事だな」


 勇者は真理と会話しながらタンスの中を調べて鍋と蓋が無事なのを確認した。袋に入れた素材もそのままあった、換金されたのは魔物の卵だけらしい。勇者はベルトとポーチ、ブーメランをタンスにしまった


「人ひとり担いで街中を走りまわれるくらいだもんね。あたし上使っていい?」


「はいどうぞ、僕はいつも下で寝てるので。タンスは反対側のを使ってください。僕は部屋に入って左側のを使ってるので」


「りょーかい。箱の鍵はどこ?」


「今まで使う必要が無かったのでわかりません。明日ゴードンさんに聞いてみましょう」


 真理はべットの二段目によじ登った。勇者も下のベットに入り横になった、棍棒は枕を下にずらしそこに置く、もし寝ている時に襲われても仰向けに寝ていれば右手を上げ頭上にある棍棒の握りに手が届く様に


「よいしょっと、柵が無いから寝返り打ったら落ちそうで怖いわね」


「やっぱ下にします?」


「いいわ、上の段ならあたしに手出しし難いでしょ、薄い本みたいに!って…ゆうと枕の位置変えた?」


 真理が頭を出しゆうとを覗き込んで聞いてきた、ゆうとの足側からだ


「武器を置く為に下にずらしましたけど?」


「そういう事じゃなくて上と下で枕の位置が逆なんだけど、あたしの枕はこっち」


 真理は枕を手に持ちひらひらとさせた


「上の段は僕の足元にあたる位置に枕があるって事ですか?」


「そう、何でかしら?」


「単純にそろえるのが面倒だったんじゃ?」


「いい加減ねここの兵隊は」


「ゲスト用に用意した部屋ですし、気が緩んだんじゃないですか。二人で使う予定は初めは無かったはずですし」


 真理は頭をひっこめた


「まあ、いいか。じゃあおやすみなさい…」


「はい、おやすみ・・・ん?」


 勇者はベットの天井にナイフで彫った落書きをに気付いた


「右だと言ってるだろうが、このマヌケ・・・・何の事だろう?」


 そう思いつつ勇者は眠りに落ちた・・・


「目を開けるのです勇者達」


「ふわ!?」


「おや、今度は直ぐに起きましたね」


 勇者が目を開けるといつもの女神空間だったが、今度はいつもと違いもう一人気配があった


「何よもう…うるさいわね・・・・って!?何ココ!?」


 女神は両手を広げ真理に呼びかけた


「初めましてですね、勇者キサラギ・マリーよ」


「だれアンタ!?」


「今回は真理さんも一緒なんですね」


「ゆうと!?アンタどうしちゃったの、なんか実態が無いというかフワフワしてるけど…」


「精神体だとこんな感じらしいので気にしないでください。というか今の真理さんもそうですよ」


「えっ!ちょっとヤダなにコレ」


 真理だと思われる人型のもやが自分の身体をペタペタ触る様な動作をしている。その様子を女神はヤレヤレと言わんばかりの呆れたような顔でに見てこう言った


「落ち着きなさい勇者マリーよ、騒がしいですね。私は女神、今日は貴女に用があってきました」


「真理さんに用って何ですか女神様?」


「ちょっと!なに普通に会話してるのゆうと」


「いつもの事なので」


 そっけなく答える勇者だった。女神は話を続ける


「愚かにも神の目をかいくぐり転生した者が勇者に相応しいか見極めに来ました」


 勇者達は女神の言葉に目を点にしてキョトンとした


「見極める…て?」


「今更ぁ?」


「今まで霊的な回路パスが繋がって無かったので連絡が出来ませんでしたが、勇者ゆうとに接触した事でどうにか可能となりましたので、この機会にと」


「うわー…最悪…で?何する気よ」


 真理はウンザリしたようなオーラを発した。対照的に女神は明るくなり


「そう!今回の企画…じゃなくて試練は・・・・」


「ぱっぱらぱ~♪」


 女神の後ろから天使が現れラッパを吹いて去っていった。勇者は”あ、天使居るんだ”と何となく天使が消えた方向を見つめた。女神は後光を強くし言った


「女神と、その女神が選んだ正当な勇者を面接官とした…勇者面接です!」


「えー・・・・」


 真理は凄くめんどくさそうにしている


「僕も面接官になって、真理さんを審査するんですか?」


「はい、ご協力お願いしますね勇者ゆうとよ」


「女神様・・・やっぱり暇なんですか?」


「もちろんお仕事ですよ♥」


 女神は満面の笑みでそうい言った

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