第32話 腐敗獣

 武器を選び、その調整終わるまで待っている勇者達


「よし!出来たぞ」


 武器の調整が終わった様で親方が武器を持って来た


「ほれ、持って確かめてくれ」


「はい」


 勇者は受け取った棍棒を振った


「ブン!」


「おお、大分使いやすくなってますね」


「だろう、森で使う事を想定して熱加工を施して耐腐食性も上げた。体格に合わせてちょっと削って軽くしてやったが戦闘には支障はないレベルだ。スリングも邪魔にはならんだろう?」


「はい、特に気になりません。よいしょっと」


 勇者はスリングを肩に通して棍棒を担いだ


「ほれ、ブーメランだ」


「はい」


 勇者は受け取った3本のブーメランの中の一つを上へ回転させながら軽く投げ落ちてきた所をキャッチして使い心地を軽く確かめてからベルトに全てのブーメランを刺して携帯した


「試験場で試してみなくていいのかい」


「はい、今日の所はこのまま帰ります。色々あって疲れたので」


 待ってる間、椅子で寝ていた真理が目を覚ました


「ぐー・・・むぐ…終わったぁ?」


「はい、帰りましょうか真理さん」


「すっかり暗くなっちゃったわね・・・んーっ!さて、宿屋でも探す?」


「いえ、北門の兵舎を使わせてもらっているので、そこへ行きましょう」


「ああ、あの兵舎ね。じゃあ行きましょうか」


「はい。親方さんお世話になりました、また来ます」


「おう!ある程度使い込んだら意見を聞かせろよな」


「お兄さんもまたねぇー」


「はっはい、またのお越しを」


 勇者達は武器屋を出て行った


「んー、勇者さんが無事って連絡は来たんだが…ちょっと遅いなぁ」


 北門のゴードンは見張りをしながら不安を募らせていた、勇者が帰ってくると


「ここに来る前に武器屋によるかもって話だが一体どんな装備で来るんだ…この前は鍋だったから・・・包丁?いや、ノコギリとか金槌という線もあるか…はぁ」


 ゴードンはうつむいて大きくため息をした後顔を上げ、気を引き締めた


「まっ、なんにしてもだ、今度は何があっても絶対に驚かないぞ、さあ来やがれ」


「ゴォードーン、さーん」


 暗がりの中で手を振る人影が見える、恐らく勇者だろうとゴードンが出迎える


「お帰んなさい勇者さん、装備変えたんで…あれ」


 ゴードンは勇者を見てキョトンとした


「どうしたんですか?」


「い、いや、以外にまともな装備だったんで、その棍棒…実は骨付肉とかじゃありませんよね?」


「ハハハ、嫌だなゴードンさん。そんなネタ装備、弱い内は使いませんよ」


「いつかはやる気なんです!?」


「そんな事よりゴードンさん、兵舎使わせてもらっていいですか?仲間もいるんですけど」


「ああ、マリーさんですね連絡は受けてますよ。どこに居るんです?」


「あれ、今まで隣にいたはずなんですけど・・・あ」


「ふふふ・・・うふふ・・・」


 勇者は真理を発見した。獲物を狙うネコ科動物の様でありながら緩んだ表情で物陰から勇者とゴードンを見つめていた・・・・そうこんな感じ┌(┌^o^)┐で


「あの番兵…緊張しちゃって、もしかして年上受け?・・・力を抜けよ…優しくしてやるぜ…」


 声色を変えて何か妄想している真理にゴードンも気づいて勇者に問いただす


「ちょっちょっと勇者さん、あの方さっきから異界の言葉でブツブツ言ってますけど、まさか呪文じゃないでしょうね?」


「あー…日本語で喋ってるから分からないのか。全力で聞き流してください、言葉の意味が分からなければ無害なので・・・」


「勇者さんは分かるんですか?」


「はい、残念ながら・・・」


 勇者は”妄想を邪魔すると根に持つんだよなぁ。腐女子って”っとかつての友人の事を思い出し、出来るだけ無視すると決めた。真理の妄想はまだ続く


「ふふふ…さあ、俺の門は簡単に通させないぜ・・・・ウフフフ…」


「声に熱が入ってきましたが本当に大丈夫なんですよね!?どんな感じの事言ってるんです!」


「き、危険ですから近づかないでください!」


 真理の奇行に怯えたゴードンは勇者の肩を両手で掴み問い質した。それを見た真理が妄想をさらに膨らませる


「キャー!ここでまさかのリバ…っ…っ!」


「今度は悶え始めましたよ!」


「だから離れて!今あの人、僕とゴードンさんを掛け合わせて腐敗させる呪文を唱えてるから!」


 ゴードンは急いで距離を取った


「うわっ!早く言ってくださいよ!というか早く止めてください、そんな危険な呪文!!」


「ああ…離れちゃった・・・・」


 真理は残念そうな顔をしている。今なら話しかけても大丈夫だと判断した勇者は真理を呼んだ


「真理さん、妄想をやめて出てきてください!」


「ふぅ…もうちょっとだったのに」


 真理が茂みから出て来た


「こ、この人がマリーですか勇者さん・・・」


「はい。真理さん、この人は北門の警備責任者のゴードンさんです、変なことしないでくださいね」


「如月・真理よ、よろしくねゴードンさん。急にで悪いんだけど私もこの兵舎使わせてもらえる?」


「上からもサポートをするように指令が来てますんで構いませんけど。この人と一緒に泊まる気ですか」


「あら、男女同じ屋根で一夜を過ごさせるのが心配ぃ?大丈夫よ、あたしに触れたらその場で電撃で・・・」


「勇者さんの方が心配なんですよ!自分が何したか忘れたんですか!」


「ちょっとゴードンさん!」


 真理はまた妄想の世界に旅立って行った


「ふーふふ…お前が心配なんだよ…あの女には渡さないぜ…」


 ゴードンは剣を抜く


「マリーさん、今すぐその呪文をやめないと牢にぶち込みますよ」


 それを聞いて勇者は軽くあいさつし兵舎に向かった。


「牢屋があるんですか、良いですね。じゃあ僕はもう寝ますね」


 真理は勇者の後を追いかける


「ちょっと、おいて行かないで!牢屋なんてごめんよ」


「あ!こら待て…。まあ…いいか」


 ゴードンは真理を追おうとしたが”よく考えたら俺が敵うわけないよな。勇者さんなら何だかんだで大丈夫だろ”と思い諦めた


「勇者が二人か・・・はあ…」


 ゴードンの胃炎が悪化した

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