第28話 勇者、武器屋へ行く

 城を出て装備を整えるべく武器屋に向かった勇者達、目的地の前にたどり着いた


「ここがそうね」


「はい、城の兵士さんに聞いた店で間違いないでしょう。オススメの店だとか」


 勇者達は武器屋の中へと入った。中へ入ると筋骨隆々の男が接待してきた


「いらっしゃい。ほう、新顔とは珍しい」


「はい、初めて来ました。新しい武器を買おうと思いまして、何か手ごろなのはありますか?」


「新しい武器ぃ?丸腰みてぇだか何使ってたんだ」


「木の棒です。今はこっちの真理さんが装備してます」


 武器屋の男は真理の方を見て手を出して言った


「その棒見せな」


「はいどうぞ」


 武器屋の男は真理から棒を受け取り、棒をまじまじと見つめた


「ほう…けっこう古いものみたいだが…ここ最近短期間で随分使い込んだみたいだな。前に使ってたのはどんなヤツだ」


「城の武器庫に有った物をもらったので分かりません」


「だろうな…アンタの前に使ってたヤツはこの棒を相手の攻撃をさばくのに使ってたみたいだが…最近の跡は明らかに何かを殴り殺してできたもの…使い方がまるで逆だ」


「ああ、本当はそうやって使う物だったんですね。防具で攻撃してたのか僕・・・パリングダガーみたいなものだったのかな」


 ”パリングダガー、主に三銃士が使うような剣(レイピア)の補助として攻撃をさばいたり引っかけたりする大きく横の伸びた鍔がついた防御専門の変わった短剣だ。このレイピアとダガーを合わせた二刀流は当時一般的だったたと言う…話をゲーム仲間から聞いた気がする”と勇者は思い出した


「察しが良いな、左手で使ってたみたいだから多分そうだろう。ダガーを使わなかったのは敵に近づきたくなかったからだ、それで軽くてダガーより長く振り回しやすい棒を選んだんだろうな。で…今はそっちの嬢ちゃんが使うと。今度は手を見せてみな嬢ちゃん」


「今度は手?まあいいけど」


 真理は武器屋の男に手を見せた


「柔らかい手だな、だが魔力の流れ方から察するに魔術師か、電気系が得意な」


「分かるの?」

 

「当たり前だ。なんでまたこの棒を使おうと思ったんだ?魔法使うなら手ごろな杖があるぞ、この棒よりはマシだ」


「その場のノリでもらっただけなんだけど。それなら丈夫だし、いざとなったら殴れるでしょ」


「なるほど…軽量のメイスの様な使い方をする気か…じゃあ魔法が使い易い様に調整していくか?自己修復するって言ってもだいぶ傷んでるからな」


「お願いするわ」


「7ゴールド」


「はい」


 勇者は武器屋の男に7ゴールド渡した。武器屋の男は金を受け取った手でカウンターをドンと叩き店の奥に向かって大声で誰かを呼んだ


「ドン!」


「おい小僧!お前でも任せられる仕事が来たぞ!!さっさと来い!」


「は、はい!親方!」


 奥から若い男が急いで出て来た、武器屋の男は若い男にさっき受け取ったお金と棒を渡し何かを話している


「調整するのはこの棒だ、見ての通り格闘戦に使ってた物だが、これからはあの魔術師の嬢ちゃんが使うらしい、いざとなったコレで殴るそうだ。気前よく前金で払ってくれる客だ、期待にちゃんと応えろよ」


「は、はい親方。えーと、そちらのお嬢さん、魔力の流れを見るのでそちらの水晶球に手を触れてください」


 この若い男が武器の調整をするようだ。我はカウンターの上の水晶球の前まで真理を案内した


「これね。アブラカタメラァ~…」


「呪文は唱えなくてもいいです。えーと…ふむふむ…あー…10分ほどお待ちください」


 水晶球を見つめた後、彼はそう言って起ち上がり作業台に向かった。先ほどのおどおどした感じはみじんもなく、棒を様々な器具を使って棒に着いた汚れを落としていく。その様子を真理は興味深そうに見ていた


「へぇー」


「ほれ、使え」


 親方は真理が座ってるカウンターの前の水晶を退かしクッションを置いた


「見学するのは良いが、工房に入るんじゃないぞ」


「ありがと、よいしょっと」


 真理はクッションに肘を置いて手を顎の下に伸ばし前のめりになりながら見学した。

 

 若い男は今度は油の調合しその油を布に浸み込ませて棒を磨き、棒を火の熱で油を柔らかくし棒の木の繊維に浸み込ませまた布で磨く。磨いて熱して磨くという作業を淡々と繰り返していた。親方が戻ってきて勇者に話しかける


「さてと、お前さんの武器を決めなきゃな。どんなのが要るんだ」


「はい、金属製の武器などではなく棒のワンランク上の物をと考えています」


「金属製がイヤなのか、宗教上の理由でも?」


「いいえ、弱い武器から段階を踏んで強い武器を使っていきたいので」


「ほお、変わってるな、修行熱心なことで。棒より強い武器…クォータースタッフなんてどうだ」


 親方は2m以上の長さの両端の先端が尖った棒を親指で指した


「しばらく森で戦うのであまり長いのはちょっと、それに今は装備してませんが盾も使うので」


「となると片手で扱える棍棒系の武器か・・・ちなみにどんな盾を使ってるんだ?」


「手のひらより若干大きいくらいの鍋の蓋です」


 勇者は左手をグーで握り、右手をパーに開きグーの前へ被せるジェスチャーをして説明した。それを見て親方は大笑いをした


「ハハハ!小型のバックラーか!たしかに鍋の蓋にも見えるよな。ハハハハ!」


「ホントに鍋の蓋なんだけどなぁ・・・」


「ハハハ…まあ、そんな小さいバックラーでも使いこなせば頼りになるぞ」


「はい、戦闘ではとても役に立ちました」


 若い男が急に立ち上がって作業の終わりを宣言した


「よしっ、棒の調整が終わりましたよ」


 この後に起きる騒動を誰が予想できたであろうか・・・・

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