―――二人の勇者―――
第22話 勇者の落とし物
喧嘩をしていた真理とアマンダに回復薬を投げた勇者達。真理とアマンダはずぶ濡れのになって動きを止めた
「落ち着きましたか、アマンダ様」
薬で濡れた身体が直ぐに乾いていき、二人は口を開いた
「いきなり何すんのよ!」
「何するんじゃシンシア、主なら簡単に動きを封じれるじゃろうに」
「もういい加減メンドウだったので。うう…どうしてこんな状況に」
アマンダはシンシアに近づいて肩をポンと叩いた
「相変わらず苦労が絶えない様じゃの・・・うんうん」
シンシアは眉間を押さえて頭痛をこらえている様だった。勇者はそんなシンシアには構わないでネコ耳の少女に話しかけた
「えーと、このネコ耳がついているのが真理さんでいいですよね」
「そうよ、アンタ確かゆうととか言ったかしら」
「はい。その体は何です?」
「キサマもあたしの胸を笑うか!!」
真理は勇者の首を絞め上げた
「ちっ違います!、の耳ですよ耳ぃー。僕とは違う世界から来た人かと思いまして―!」
アマンダが真理の耳を引っ張りながら説明する
「その耳は人型ゴーレムを作る時の制約の物でな、完全な人型ではなくそれと分かるように人には無いパーツを着けねばならん。じゃないと法律に触れる」
「じゃあ、本来はついてないんですね」
「ちょっと痛いじゃない放してよ!」
シンシアは今の話を聞いて何か疑問に思ったのか、アマンダに質問した
「伝統的には額か胸部に無機物を埋め込んでエメスと書くのが一般的なのでは?」
真理の耳をよく見るとエメスと入れ墨が入っているのを勇者は確認した
「猫の身体に追い込まれたお返しじゃ。それとも胸元に板をつけた方がよかったかえ?ふふふ」
アマンダは耳から手を放しネコ耳にデコピンした。真理は不満そうに愚痴をこぼす
「くっ!陰湿な魔女め。この女に任せては危険ね・・・胸を板にされてたまるもんですか。どうにか自分で・・・」
シンシアが姿勢をただし、真理とアマンダにの方を向き強くこう言った
「アマンダ様、マリー様、事情聴取をしますので一度城に来てもらいますよ」
「まあ、しかたないの。早く元に戻った事を証明して仕事に戻らねば」
「あたしも行かなきゃダメ―?」
「行く行かないじゃありません、強制的に連行させていただきます。勇者様、も一度城に立ち寄っていただけませんか。貴方の元気な姿を見れば王も落ち着くでしょう」
「はい、じゃあ僕もちょっと用を済ませてから行きますね」
「何かご予定でもあったのですか」
勇者はバツが悪そうな顔をして頭を掻いた
「教会に行って探検の書に記録しようかと思いまして。僕としたことが今まで書くのをすっかり忘れてまして。こんな初歩的なミスをしてしまうとは」
真理は心当たりがあったのか探検の書について聞いてきた
「探検の書?あの変なひらがなの羅列が書いてあった手帳の事?」
「そうです。真理さん僕の装備はどうしたんですか」
「アンタを持ち出す時に一緒に袋の中に押し込んどいたわ、卵の入った鍋と素材が入った袋は置いてきたけど。工房のどっかにあるはずよ」
「はい解りました」
勇者は工房の中を探索し大きな袋を見つけた。勇者は棒とポーチを装備した
「取りあえずこれで良し。大釜の蓋と杖の切れ端はここに置いて行こう、壊れてるし。えーと探検の書は・・・・真理さーん、袋の中に見あたりませんけどドコへやったんですー?」
「確かにアンタと一緒に放り込んだはずよー。よく探してみてー」
「うーん、他に何か入ってる様子は無いんだけどな・・・あ」
勇者は袋に空いた穴を見つけた
「真理さん・・・袋に穴が空いてますが・・・」
「え、ホントにー。引きずりながら運んだから擦り切れちゃったのかな」
「と言う事は僕の探検の書・・・」
「アンタ運んでる間に落としちゃったみたいね」
たんけんのしょ が きえました
「ウワワワワワワワアアアアアァァァァ!!!!」
勇者は絶望の叫びをあげた
「なに!?急にどうしたのよ!?」
「いやっまだだ!さっきの戦闘でどっかに飛んでったのかもしれない!!探検の書!探検の書!探検の書ぉ!!」
「ぽいっ、ぽいっ、ぽいっ」
勇者は工房にあった壺をリズミカルに持ち上げて投げた
「パリン!パリン!パリン!」
「止めろ!勇者ぁ!魔法薬が反応して爆発でもしたらどうする!」
アマンダは勇者を羽交い絞めにした
「放せ!くそう!ここには無いのか。真理さん僕を運んだ道は覚えてますか!?」
「え、ええ、大体は・・・」
「案内してください直ぐ!」
勇者は真理の腕をつかんで引っ張った
「ちょっと、今私半裸なんだけど!」
「じゃあ、この袋の中にでも入っててください!」
勇者は真理を大きな袋へ押し込んでかついだ
「それじゃあシンシアさん僕行きます!」
「行きますって勇者様まだ事情聴取がすんでなっ!」
「あってくれ!僕の探検の書おぉぉぉぉぉ........」
勇者は真理をかつだまま走り去ってしまった
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます