第19話 うん、よく煮込まれた勇者だ

 魔物の巣での戦いの後、魔女にさらわれてしまった勇者ゆうと。その魔女の正体は別の方法で異世界から魔女の身体に召喚された勇者真理だった。ゆうとは助けに現れたメイド長シンシア、魔女の元の身体の持ち主の猫のアマンダの力を借り、偽りの魔女真理を倒したのだが・・・


「勇者にゃん!なにボーとしてるにゃん!」


 アマンダの呼びかけで我に返った勇者


「はい、寝起きでちょっと混乱してしまったみたいで回想でもしようかなと」


 シンシアは大釜に頭を突っ込んだ真理に近づき身体をナイフの先でつついている、意識がまだあるのか確認しているのだろうか


「しかし、どうしましょうかコレ。下手に回復させたら襲ってきそうですが」


 そんな事をしていると大釜の中身がウネウネと動き出した


「ピィーピピィ」


 勇者は戦闘体制に入った。シンシアも無言で距離を取りナイフを構える


「シャキ」


「新たなモンスターと連戦か」


 アマンダが勇者達の前に立ちふさがった


「ちょっちょっと待つにゃん。ユーシャあいつが何て唸ってるか分かるかにゃん?」


「え、ピーピー言ってるようにしか聞こえませんけど・・・。あ、あのプリンの時と違いますね」


「うむ、ちゃんと下処理がされてるようだにゃ」


 アマンダはうんうんと頷きながら何かを考えている


「勇者様、これは放っておいていいと言う事でしょうか?」


「そうみたいです」


「よし、このアメーバを使って生体ゴーレムを練成し、私の身体に居る魂をゴーレムに移すにゃ。えーと、チョークはどこにあるかにゃ…」


「ガタ、ゴトガタ」


 アマンダは部屋を引っ掻き回しはいじめた


「シンシアさんチョークが要るそうです」


「でしたらここに。どうぞアマンダ様」


 シンシアはチョークを取り出しアマンダに渡した


「おー、シンシニャ相変わらず用意が良いニャ。魔法陣を書くのに時間が掛かるからしばらく待つにゃ」


「作業に時間が掛かるから待つように言ってますよ、シンシアさん」


「そうですか・・・ですが本当にこのウネウネを放っておいていいのでしょうか?」


「身体の持ち主が良いと言ってるんですからいいんじゃないでしょうか。何やら触手プレイの様な状況になってますが」


 アメーバはさっきより活発に動きはじめ、触手の様な物を伸ばし魔女の身体をいじりまわしている


「ニャー!!作業を急ぐにゃ!にゃにゃにゃにゃにゃ、こらユーシャこっち見るんじゃないにゃ!あと絶対に手出しするんじゃにゃいにゃ!」


 アマンダはチョークを口に咥え床に魔法陣を急いで書いている


「はい。シンシアさん手出し無用だそうです、見られるのが嫌な様なので僕達は外に出ていましょう」


「了解いたしました」


 勇者とシンシアは外に出た。ドアは蹴り破られ閉められないので入口の両脇に立った


「言うのが送れましたが、シンシアさん助けていただいてありがとうございます」


「礼には及びません。正直狂人同士好きにさせてもいいと思ってましたが…もっと厄介な事になりそうだったので…あのバカ」


 シンシアは眉間を押さえてうつむいてしまった


「何かあったんですか?」


「はい、実は・・・」


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