第4話 勇者ご乱心?

 クプウルム王国会議室に集まり王からの状況説明が始まる。


「勇者殿、改めてこの国の危機を救うため召喚に応じてくれた事に感謝する。今我が国は魔王配下の軍勢に囲まれ滅亡の危機にある。この地図を見てほしい」


「はい」


「現在クプウルム周辺には4つのダンジョンがある。北の森に一つ、そして東の魔物に汚染された毒の沼地、南の銅鉱山、西の塔の4つです」


「なるほど。この地図はもらってもいいですか?」


「もちろん、旅に必要な物はこちらで用意しよう」


「薬草を一つと200ゴールドを」


「薬草と200ゴールド?それだけでよいのか?」


「はい」


 その時、王は思った・・・この勇者手馴れていると。正直ひ弱な印象さえ持っていたが、それは不完全な召喚により弱体化した為で。元は別の世界をいくつか救ってきた英雄に違いない


「ふふふ、なるほど。余分な道具を持たないのは暴漢などに狙われて無駄な騒ぎを起こさない為か。しかし武器や防具を持たないのは少々まずかろう」

 

「確かに、防具はさっきメイドさんからこの服をいただきましたが。棒ぐらいは装備したいですね」


 ただの布で出来た服が勇者にとっては防具!?以前異国のコロシアムの剣闘士を見たとき、なぜ裸に兜と腰巻と言う奇妙な格好なんだと思い、理由を聞いたことがある。剣闘士の男いわく


 ”服なんて着ても掴まれやすくなるだけですよ、鎧着ないも一緒です、組み伏せられて鎧のすき間からあっさり刺されちまう。頭だけはヘルムでしっかり守りますがね。後は好みですが斬り合ってると前腕を狙われやすいんで篭手を着けるかどうかですかね、オレァ腕があんま重くなると武器を振り難いんで着けてませんが”


 闘技場内で人間同士で戦う事に特化した彼ららしい意見だと納得していたが。勇者は布の服に防具としてどんな役割を見出していると言うのだ。そのような事を王が考えているとメイドが薬草と小銭が入った袋を持って来て勇者に手渡した


「勇者様、ご要望の品をお待ちしました」


「ありがとうございます」


 王様は思考を止め我に返ると勇者はまだ武器を持ってない事を思い出した


「武器庫に案内しよう。勇者殿ついてまいれ」


「はい」


 王と勇者は武器庫に到着した


「さあ勇者殿、ここから好きな武器を選ぶが良い」


「ふむ」


 勇者は武器庫内を見渡してから中にテクテク歩いていき


「テクテク」


 武器には目もくれず樽を持ち上げ


「よいしょ」


 投げた


「ガン!ゴロゴロ・・・」


 投げられた樽は床にぶつかった後に奥に転がっていく。それを勇者は不思議そうに見つめた後一言呟いた


「あれ?壊れない」


「どうなされた勇者殿!?」


「いや、武器選んじゃうとイベント進むだろうから一通り調べてからにしようかと」


「ガコガコ」


 先ほど投げた樽から物音がし中から声がした


「・・・・ぃでででで、クソ勇者め」


 その声を聞き王は叫ぶ


「何者だ!!」


「シャア!」


 樽からモモンガの様な魔物が飛び出し王が狼狽える


「魔物!?城内に入り込んでいたのか」


「キェヘヘヘ!勇者を召喚しようと企んでるって聞いてよ。こっそり始末しよとしてたんだが…キャハハ!ちょっと遅かったようだな。まさか部屋に入るなり真っ先にオレに気づくとは流石勇者だぜ」


 勇者は何となく魔物を見つめそっけなく答える


「いいえ。偶然です」


「ヒェヘー!舐めた態度とりやがって!若造の王共々ここで葬ってやるぜ!」

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