第7話【2027J05131530佐川ユウ 1-2 】
結局、勉強しないまま朝を迎えた。
どーせ成績には関係ないテストだし、0点でもいい。
小テストなんて十問程度だろうし、そのうち何問かが期末テストに出るというのなら、小テストに向けて勉強なんてしないで、出た問題と答えを期末テスト直前に暗記すりゃーいいのだ。俺って最高に天才だ。
自己弁護の考えもまとまり、軽やかに自転車を漕ぎ学校へ向かう。俺の住む北国もようやっと初夏の気温だ。
昨日立ち寄ったコンビニのところで左に曲がり、あとは学校まで一直線。
「………あれ?」
コンビニがない。
「マンション、マンション……」
間にあったコンビニがどこかへいってしまった。昨日までコンビニを挟んで建っていたマンションが、今日は隙間十センチぐらいでビッチリと建っている。
道間違えたのか? と周囲を見るが、どう見てもいつものコンビニの場所だ。毎朝通っている道だし間違うはずもなく、つーか昨日立ち読みした場所だし。
軽いパニックになって突っ立っていると、マンションから昨日コーヒーを買っていったスーツの男が出てきた。
「あの……ここにコンビニなかったですか、ね」
「コンビニ? あぁ、それなら向こうだね。歩いたら十分ぐらいかな」
おどおどしながら話しかけてみると、丁寧に答えてくれた。
「あ……ありがとうございます」
確かにここからちょっと離れた場所にもコンビニはある。それは知っている……が。
あんた昨日ここのコンビニでコーヒー買った……よな?
「………」
いつまでもここに突っ立っているわけにもいかず、学校へ。
さて、自己弁護はしたもののやはり0点は避けたい。英語の教科書を開き、授業開始までの二十分間だけでも抵抗をしてみる。頭を抱え必死に教科書を読んでいると、高橋が側に来た。
「佐川……? お前が授業前に予習するとか、この世の終わりか……?」
……ち、嫌味かよ。
あーそりゃあお前は頭いいからな。小テストなんぞ勉強しなくたって余裕なんだろうがな。俺だってヤマが当たれば勝てるかもしれないんだぞ。
「レア武器は諦めていないからな」
俺がそう言うと高橋が不思議そうな顔をした。
「レア武器? あぁそうそう。お前が欲しがっていたレア武器な、あれ手に入れたからよ、今日お前にやるよ。夜九時な」
「やるって……それが今日の英語の小テストの報酬だろうが」
「小テスト……?」
あぁそうかよ。お前にとっちゃ忘れていても問題ない程度のことなんだろうな。
「昨日約束したろ。今日の英語の小テストで、俺がお前より点取ったらレア武器くれるって」
「英語の小テスト? そんなもん今日ないだろ。あ、あれか。突然やるのをお前だけが事前に情報掴んだってやつか」
何言ってんだ。ボケがしつこいな。
「昨日、英語の三原が言ったろ。今日小テストやるって」
「三原……? 誰だ、それは」
誰だって……あーもういい。お前に構っていたら点が取れん。
「はい座りなさーい。授業よー」
うわ、高橋に構っていたら全然勉強出来なかったじゃないか。
「あら、佐川君。予習なんて珍しいわねぇ。心を入れ替えたのかしら?」
俺が教科書を必死に読んでいるのを見つけた女教師が一言。クラスに笑いが起きる。
「あ……いえ、テスト……」
そこに現れたのはザ・スポーツマン三原ではなく、若く華奢で綺麗な女教師。
「テスト? そうねぇ、佐川君は期末テストではクラス最下位から脱出しないとね」
もう一度笑いが起きる。
「はいはーい、教科書開いてねー」
誰だ、この女教師は。三原が休んだから臨時で来たのか? しかし初めて見る先生だな。
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