第三話 見知らぬ駅

私は目を覚ました。気が付いたら朝になっていた。まさか私は一晩寝ていたというのか。時計は7時9分を指している。周りの景色から現在位置を確認する。私は今進行方向に対し左を向いて座っている。前には山、後ろには道路、そのすぐ向こうには湖がある。このあたりで湖と言ったら、研到湖けんとうこしかないはずだ。ということは、今私は衣夜探いやたん付近にいるはずだ。


ここまで考えたところで、アナウンスが聞こえる。


「セウラバレ・アサマレ・オン、ヘルミクサ、ヘルミクサ。」


私は驚いた。車内アナウンスが聞いたこともない言語になっていたからだ。アナウンスの単語が一つも聞き取れない。どころか、何語かすらわからない。かろうじて、何度も繰り返している「ヘルミクサ」という単語が駅名なのだろうと察することが出来た程度だ。


電車が止まる。意識していないのに、体が自然と出口へと向かう。私が乗ったのは終点だったから、運賃は一番大きい数字を見ればよい。1120円と書いてある。こんなに高くなるはずはない。確か運賃は最高でも690円だったはずだ。頭ではこんなことを考えているが、私の体は既に定期を取り出していた。私がいつも使っている410円区間の6か月定期だ。無人駅なので定期を運転手に見せる。運転手は何も言わない。気が付いたら私は電車の外にいた。どうやら定期が使えたようだ。


駅の外に出て、私は意識を取り戻した。駅の中を調べてみる。中には誰もいない。壁には時刻表が貼ってある。ほとんどの文字はかすれていて読めないが、いくつかの平仮名と漢字が確認できる。時刻は始発の6時39分以外確認できない。出口は左側のようだ。出口の隣には駅名表示があり、「入越」と書かれている。前と次の駅は書かれていない。


私はこの駅を去って、ここがどこかを知るために交番に行くことにした。

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