第二話 7000系

私が振り返ると、そこには、「7004」と書かれた番号札があった。電車の車両番号を示すものであるが、7000番台の車両は存在しないはずである。そもそも私が乗っているこの電車の内装は、5000系のはずだ。それなのになぜ7000系などという表示がしてあるのか。そんなことを考えていると、車内アナウンスが流れる。


「まもなく、初均はつなり高校前、初均高校前です。料金は、ホームの係員にお渡しください。」


私は安心した。いつものアナウンスだ。


しばらくして、電車が駅に止まる。23時過ぎなので、ホームには誰もいない。電車の扉は一瞬だけ開いたが、すぐに閉じた。電車はまた発進する。


「次の停車駅は、打近町だきんちょう、打近町です。」


まだ私の降りる駅までは15分以上ある。最近はやりのスマホゲーム、「Element Gatherer」をプレイしよう。これは元素を集めるゲームだ。終盤では有機化学要素があるらしいのだが、私はまだ鉄イオンの擬人化を眺めているところである。


「まもなく、打近町だきんちょう、打近町です。」


アナウンスが聞こえる。だんだん意識が朦朧としてくる。私は22時以降に起きていることがめったにないからだ。眠くなるのも仕方ない。というよりも、体が勝手に吸い込まれていく。なんというか、起きていることが出来ない状況である。ついに私は睡魔に負けてしまった。

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