第10話 高校デビュー!!⑩

「え? わけわからないんだけど……」

 ―――社会不適合者を管理する学校―――

 なんだよ、それ! そんな学校があるわけがない。もし、そんな学校があっても単純に人権的に問題だから、学校法人が黙ってるわけがない。

 戸惑っている俺に柿崎が言う。

「僕もね。最初は、そんな学校が現実にあるなんて思わなかったし、まだ信じたくない。だから、これから理事長に話を聞きに行かないか? 臥竜先生の体罰の件もそこで話そうよ。」

 柿崎の提案に俺は首を縦に振った。


「そういえばさ、柿崎」

「ん、何だい?」

「今さらなんだけど……ここどこ?」

「ああー。まだ言ってなかったね。ここは僕たちの寮の部屋だよ」

「僕たち?」

「そう。僕たち二人はルームメイトってわけだ」

 うわぁ、こいつと一緒の部屋なのか……先が思いやられるな。まだ臥竜の件で信用出来ないよ。これからずっと生活するわけで、もし、こいつとの生活が嫌になったら、部屋の変更とか出来るのかな? それが心配だね。

「そんな嫌な顔されたら、僕もショックだよ」

 柿崎はショックを受けていた。

 俺、そんなに嫌な顔をしてたのか……? 今度から気持ちが顔に出ないように気を付けよう。学校の人気者になるためには、いつもニコニコポーカーフェイスを修得しなければならないからな。それさえ出来れば、自然と人は寄ってくると以前読んだ本に書いてあった。

 よ~し! 今からでも遅くはない。ニコ、ニコ。ニコ~ニコ。

「うぇぇ~。何笑ってんの? 斎藤くん、その笑い方、気持ち悪いよ」

 ガーーン!! 嘘だ。俺は笑うことすら出来ない、下等な生き物だったとは……。

 ここに来て、中学時代に全くしてこなかった、「笑う」ということの難しさを痛感した。人前だと自然に笑えないのは、まだコミュ障が抜けきってないんだな。

 でも、こいつとは普通に喋れているのが、不思議でもあり、俺の進歩とも言えるだろう。俺は親以外の人と久しぶりに話せて嬉しかったね。そいつは性格になんありだけどな。


「そういえば、斎藤くん。お昼はまだだよね? もし良かったら食堂に行こうよ。そのあとに理事長に話を聞きに行こう。」

 そういえば、腹が減ってることを忘れていた。人間、いろいろあると空腹感を忘れるよね~。

 俺が寮の時計を見ると、もう3時20分頃だった。臥竜の頭突きで7時間近く意識を失っている計算になるな。あいつは絶対に学校、いや日本から追放させてやる。

 いろんな決意をしたが、まずは腹ごしらえだ。

「よし、行くか」

 ということで俺と柿崎は食堂に行った。


     〇●○


「うわ~すごいな」

 食堂に来た俺は眼前の光景に目を奪われていた。

 豊富なメニュー、綺麗さもありつつ、どこか、ほっと落ち着く温かみがある食堂のデザイン。ネットで事前に見ていたとはいえ、本物はネットの画像以上に素晴らしいものだった。

 僕と柿崎は早速、席に着く。

 ここはオーダー制の食堂。つまり、席に座ったままで注文できる。従来の食堂は、わざわざ立って注文するのが多かったが、この学校の食堂は席に置いてあるブザーを鳴らすことで食堂の人が注文を取りに来てくれるのだ。ここまで便利だと食堂というよりレストランという感じだ。

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