第9話 高校デビュー!!⑨

     ○●○


 目を覚ますとそこは見知らぬ天井だった。

「はっ……! いててて……」

 俺は頭の痛みで額に手をやった。

 てゆうか、ここ、どこだ? 記憶が混濁こんだくして、俺が何で寝てたのか憶えてない。

 辺りを見回すと一人の爽やかな少年がいた。

 その少年がこちらに気付き、喋り出す。

「あ! 斎藤くん、目が覚めたんだね。大変だったんだよ。頭突きで倒れた君をここまで運んだんだから、感謝してほしいよ。」

 ん? 頭突き?……頭突き、頭突き、頭突きぃぃぃぃ!!

 俺は事の顛末てんまつを思い出した。臥竜という凶暴教師の存在と柿崎の裏切りを―――

 てか、何でテメーがここにいる!?

 爽やか少年こと柿崎正吾が目の前に居たのだ。

 俺は柿崎に言う。

「おい。よくここに顔が出せたねぇ。この裏切者め……。」

 柿崎がそれに続く。

「まあまあ、僕も悪かったよ。ごめん、ごめん。ダメだよね、人の頭突きされてるのを純粋にリアクション芸として楽しんでしまったんだから……怒るのも無理はない。」

「とんでもない人だよ!! あの頭突きの威力を見たあとで人をおとしいれ、楽しんでた……君に、狂気すら感じるよ!!」

「はははは!!」

「『はははは』じゃねーよ。クソヤロー」

 俺、一つ大事なことを思い出した。

「なあ、柿崎。入学式は? 入学式はまだ始まってないよな?」

「何言ってんの、入学式はもうとっくに終わってるよ。君が気絶して寝てる間に終わったよ。」

 チャラリーン、チャラリラリ~ラ~♪

 悲劇の音楽が頭の中に流れた。

 嘘だ。嘘だろ……。俺がどれほど、入学式を楽しみにしていたことか。皆で入学式に、校長先生のやたら長い話を聞き、「長かったなあ」と、まだ知らないクラスメイト同士で言い合う、この高校生活に一度しかないイベントを、俺は頭突きぐらいで味わうことが出来なかったのか……。クソぉ、涙が出てくる。

「ちょっと何、泣いてんの?」

「てめぇの所為せいだろうがよっ!! お前が頭突きからかばってくれてたら、俺は入学式に出れていたのに―――」

 「よしよし」と柿崎は俺の頭を撫でた。

「野郎に頭撫でられたって嬉しくねーんだよ!!」

 俺はさらにブチギレた。

 すると、柿崎は急に真剣な顔になり語り出す。

「話は変わるんだけどさ。ここの教師……というか生徒もおかしいんだよね。」

「どういうこと?」

「僕らは君と守田くんが気絶してる間に入学式が行われたんだよ―――」

 あー、そういえば守田くんも頭突き被害者だったね。彼は無事なのだろうか?

 柿崎が話を続ける。

「その入学式は酷い有様ありさまでね。生徒たちが真面目に入学式をしようとしてないのか、喧嘩をしてたり、大声で笑ってたり、などをしてたんだ。一番の問題点は、そういう問題行為をしていた生徒がほぼ全員だってことだよ。しかも、教師が生徒を注意しないから、そのお陰でまともな入学式にはならなかった。そして、理事長が喋った内容がこの学校の異常性を物語っている。理事長は『この学校は社会不適合者たちを更生、管理するための学校』と言ったんだよ。」

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