第8話 高校デビュー!!⑧

「あ、あの~ですね……席を確認するのを忘れていて、間違えちゃったみたいです」

 俺は真実を語った。ここで嘘を付いても意味ない気がしたからね。

 臥竜先生は静かに喋り出す。

「それは、お前の責任やな。」

「はい……。」

「じゃあ、頭突きやなぁ。ここに立て!」

 俺は教卓の前のところに立たされた。

 ん? ちょっと待てよ。何で席間違えただけで頭突きされなくちゃならないんだよ。俺は素直に話せば頭突きを回避できると思ったのに! ちゃんと3秒以内に座ったじゃん。自分の席ではなかったけどさ。

 俺は自分の思いを語った。

「何で頭突きなんですか? 僕…席、間違えたのは悪いと思ってます。でも、頭突きはいくらなんでもやり過ぎですよね?」

「ああん!? お前が悪いんやろうが! 違うんか? なあ!なあ!なあ?」

 めちゃめちゃキレてるけど、ここで食い下がるわけにはいかない。俺はこれからの楽しい学園生活のためにはコイツは障害となる。俺はコイツをどうにかして、頭突きENDを回避したいワケだが、一体、どうしたものか……。仕方ない素直な思いを言ってやろう。

 俺は言う。

「先生って、そういう恐怖で生徒をおとしいれて楽しいですか? そんなんじゃ誰も先生のことを信用しないし、好きにもなれないですよ!!」

「そうなんやな。へぇ~、お前ら俺のこと嫌いなんやな?!!」

 と臥竜は生徒たちを見回し、脅していた。

 しかし、悲しいことだ。悪は絶対に滅び、正義は滅びない。そういう鉄則があるから、アニメや漫画は勇気をくれるんだよ。

 臥竜は、もうおしまいさ。

『いやいやいや』

 俺以外の全員手を横に振り、臥竜先生の問いに答えた。

「先生のこと、嫌いなわけないじゃないですか」

「先生は間違ったことを正そうとしているだけですよ。間違ったことをしたそいつが悪いんですよ。」

 と先生を擁護する声が多かった。

 コイツらビビってんだ。先生に歯向はむかったら、頭突きされると恐怖してるんだろうよ。自分が可愛いんだね。

 俺が失望していたときに柿崎が手を上げる。

「なんだ? 柿崎」

 そうか、柿崎なら俺をかばってくれるはずだ。ありがとう柿崎、やっぱり持つべきものは友だね。

 柿崎が少しニヤリとしながら言う。

「学校が始まるまで、斎藤君は僕の持ってきたチョコレートを食べて、のほほんとしてましたよ。くだらない下ネタの話を僕にしてきてね。」

 コイツ……裏切りやがった。いかにも俺が酷いヤツと言わんばかりに言ってやがる。しかも全裸男の話を「くだらない下ネタ」と比喩ひゆしてやがる。

 俺はムカついて反論した。

「おい!柿崎。お前がチョコレートを渡したんだろ。しかも全裸男の話を聞きたがってたのは、てめぇだろうがよ!! 席を間違えたのもお前の原因でもあるんだぜ?」

「でも、嘘は付けないよ……。これは事実だから。」

 うわぁ、コイツ、ムカつく。しかも、心なしか笑ってるように見える。だから一層に腹立つ。

 もしかして、俺が頭突きされるのを見たいのかもしれないな。俺はリアクション芸人じゃね~ぞ!

「まあ、結局お前は頭突きからは逃げられないわけだ。」

 臥竜先生が俺の頭をガシっと掴み固定する。俺は目の前に倒れている守田君の姿を見て、恐怖が増大していく。

「じゃあ、歯~食いしばれよ。」

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 俺は必死に逃れようとしたが、先生の力は異常で逃げられない。

 ゴンッッ!!!

 俺は頭突きのあまりの衝撃に意識がもうろうとした。すると、柿崎の笑い声が聴こえた。やはり、こいつはそれが目的だったんだと確信した。

 もう意識が―――


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