第7話 高校デビュー!!⑦

「お前、名前は?」

「も、守田優一朗もりたゆういちろうです。」

 遅れてきた少年は守田君というらしい。しかし、守田くんも災難だ。今、今世紀最大の危機に瀕しているのだから―――

「じゃあ、歯~食いしばれよ!! 頭突きしま~す。」

 臥竜先生は守田君の頭をガシッと掴み、固定していた。

 守田君が語り出す。

「ちょ、ちょっと待ってくださいよ。先生! 僕が遅れたのには理由があるんです。」

 臥竜先生が訊く。

「何だ理由は?」

 守田君が答える。

「僕が朝起きたとき、自分の部屋はゴキブリ景色でした。う……思い出したら気持ち悪くなってきた。とにかく、そんな大量のゴキブリを見て、あまりの驚きに気絶してしまって、目が覚めた時すでに遅し。という訳です。だから、学校に遅れたのは事故なんです。」

 この話は作り話だと思った。守谷君、嘘を付くのヘタすぎるだろ! まず、春にゴキブリが、わんさかいるわけがない。

 臥竜先生が怪訝そうな顔をし、こう反論する。

「でも、結局、寝坊ってことだよな。ゴキブリに耐性がありゃあ、気絶せずに済んで学校に来れただろうがよ。ということはお前の責任だよな?」

「はっ……!」

 核心を突かれたのか、守田君は動揺していた。

 臥竜先生に論破されてるよ。ス〇ッとジャパンのイ〇ミ課長より、鋭い論破だったね。守田君の頭突きENDエンドまぬがれないみたいだ。

 でも彼は諦めていなかった。

「先生、もし僕に頭突きをしたら、教育委員会に訴えますよ? それでも僕に頭突きが出来ますかぁ?」

 勝ち誇ったようにニヤける守田君。

 そう、その手を使えば普通の教師なら頭突きをしないだろう。しかし、この覇王、臥竜には通じるのかどうか……

「お前、喧嘩売ってんのか?……タダじゃ済まねえぞ。」

「ひぃぃぃぃ!!」

 臥竜の思いもよらぬ言葉に守田君は驚き、おびえていた。

 やはり、この教師は異常だ。

 臥竜先生はさらに強く、守田君の頭を押さえつけ固定した。

「ごめんなさい。許してください。もう、しませんから。」

 泣きながら謝る守田君に臥竜先生は自分の体をのけ反らせ、思いっきり額を守田君にぶつけた。

 ゴキっ!! 強く鈍い音が辺り一面に響いた。

 守田君の様子を見ると―――

 白目を向いて、気を失っていたんだ。その頭突きの威力たるは、バイクに轢かれるぐらいの強さだったのではなかろうか。目の前で人が轢かれたのを見たぐらいの衝撃だった。

 クラス全員が守田君の変わり果てた姿に驚きを隠せない。もし、自分が学校に遅れていたら、この頭突きをくらったのだろう。と全員が内心、思った。

「こいつの席はどこだったけな……」

 臥竜先生は守田君の席を探しているようだった。黒板に貼られた紙を眺めていた。どうやら、そこに席が書かれているようだ。

 すると先生は俺の席の方に歩いてきた。

 俺は近くに守田君の席があるのかと辺りを見回すが、空席はない。

 まさか―――!

 そう思った頃には、もう遅かった。

「お前、何で守田の席に座ってるんだ?」

 俺は運悪く守田君の席に座っていたらしい。てか、これ頭突きENDじゃね。

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