第2話 高校デビュー!!②

 俺はすかさず、スマホを手に取り、110番に通報した。

「あの、警察ですか?」

『はい。そうです。どうかされました?』

「へ、変態が……変態がいるんです!!! 早く来てくださいっ!!!」

 俺は震える声で警察の人に伝えた。怖い……怖いよ。人間って未知の恐怖を味わうとこんなにも震えが止まらないとは、思わなかったよ。男の俺がこんなに怖かったんだ! 女性ならもっと怖いだろうね。


「誰と話しているんだい?」

 突然の第三者の声に振り向くと俺の真後ろに全裸野郎が立っていた。

「ギャー!!! は、早く、来てください!! 襲われるぅぅうぅううううう」

 俺は奴から逃げながら、スマホに大声で助けを求め、警察の人がその緊急事態をくみ取ってくれた。

『大丈夫ですか!? 今すぐ助けに向かいますので、逃げ切ってください! 場所はどちらですか?』

私立陽々学園しりつようようがくえんです! 最短、最速、抜かりなく助けに来てください。僕の人命がかかっていますからぁ!!」

『わかりました。ご武運を祈っています』

 電話は切れた。何だよ、ご武運って! 奴が追いかけてくる。逃げなきゃ、逃げなきゃと思いながらも自分の体力の無さに脱帽する。ああ、中学時代は嫌でも運動部に入っておくべきだった。健闘虚しく俺はその場で力尽きてしまう。それでも、なお全裸のバケモノは俺に近づいてくる。

「ぜぇ……はぁ…はぁ…こっちに来るな!! お前はもう終わりだ。警察を呼んだぜ。今すぐ逃げねえと、警察が到着するぜ」

 俺は悪役のようなセリフを吐きながらも、全裸野郎に、あいつ自身の危機を認識してもらった。しかもタイミング良く、「ピーポー、ピーポー」とパトカーの音が聞こえてきた。ナイス、警察!! これなら奴も逃げるしかないだろうと踏んでいたが―――

「フンっ! 僕がこの程度でくっすると思ったのか? 僕にもプライドがある。僕は全裸の神の使徒しとだ。すべての人類が幸福になるためには、皆が全裸になることしかないのだ。見てくれ! 全裸になったことで輝いている僕を!!」

 奴は空を見上げながら、大きく手を広げ、恍惚な表情を浮かべていた。

 ヤバいよ。こいつ、ただの変態じゃなかった。世の中にいてはいけない部類の人だったよ!! なんだよ、全裸の神って、そんな神様がいたら、この世の神を崇拝する宗教は終わりを迎えるだろうね。

 

 全裸野郎は正気に戻り、こう言った。

「どうだい? 僕の幸せを肌身に感じたことだろう。だから、君も全裸にならなきゃね。」

「………」

 ん? こいつは何を言ってるんだ。おい、何で俺のズボンを脱がそうとしてくる!? 

「たずううけてええええええええええ!!!!!!!!!」

 今まで出たことのない助けを呼ぶ叫びが周囲にとどろいた。

 うぅ……これから俺は拷問を受けるだろう。全裸にさせられ、学校中の笑いものになるんだろう。ああ、高校生活も入学式すらできずに終わりだ……。DEAD ENDデッドエンドより恐ろしいBAD ENDバッドエンドを迎えるのだろう。そう思うと涙が出てきた。中学時代の虚しさが走馬灯のように流れこんでいたときだった―――

「警察です!! その手を放しなさい!!」

ヒーローは遅れてやって来たのだ。


 

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