epilogue:アタシのことは”ダリアの姉御”と呼びなッ!!!
心地よい風が窓のカーテンを揺らす昼下がり。仮設された建物の中、可憐なドレスを身に纏ったナナが、花束を抱え廊下を歩いていた。
(そろそろ元気になってるかな……)
BREADとの激しい死闘から既に3日、ブラディックを倒した直後に意識を失った姉御は、急遽優先的に仮設されたこの病棟で治療を受けていた。
姉御の意識はすぐに回復したものの、傷付いた体を癒すため、しばらく花の都で安静にすることを約束させられていたのだった。
「姉御さ……オッホン、ダリアさん!入りますよー!」
見舞にやってきたナナはドアを叩くと、姉御のいる部屋へと入っていった。
しかし、ドアを開けた瞬間、そこには姉御の姿はどこにも見当たらなかった。
ナナが慌てて周囲を見渡すと、ふとベッドの上に、白い花の添えられた紙切れを発見する。
可憐に、そして美しく咲くダリアの花をそっとベッドの横へ置くと、ナナは丁寧に折りたたまれた紙を開き、中身を確認した。
そこには、姉御からのものと思われる文章が書き記してあった。
ーーーーーーーー
ナナへ
先に言っておく、アタシは手紙なんてほとんど書いたことがねぇ。だから文章が変だったり、字が汚かったりしても、そこはまあ大目に見てやってくれ……。
単刀直入に言うと、アタシは旅を続けることに決めた。無論、花の都が居心地悪いだとか、あんたと暮らすのが嫌だとか、そんなことじゃーないんだ。
ここは良いところだ。みんなあんなに辛い目にあったはずなのに、ここを少しでも早く以前のような、平和で豊かな花に溢れた都に戻してやるって張り切ってたよ。みんないい笑顔をしてる。全く強い奴らだよ……もちろんナナ、あんたも含めてな。
あんた達と暮らす未来もあったのかもしれない。けど、今回の旅で思ったんだ。この広い世界には、まだまだ強えー奴がいる。そしてその中には、力を悪用するとんでもない奴も存在してるって……。
今までも偶々人助けをしてたってことは多々あったんだ。けど、世の中にはブラディックのような強大な力を持った悪人も山ほどいるはずだ。現に奴も最後、何か意味深なことを言っていた……もし、もしも、そんな奴らから苦しむ人々を救うこと出来るのなら……アタシのこの力を必要としている人達がいるのなら、アタシはそういう事のためにこの力を使いたい。あんた達とこの都を救えた時、アタシ自身も本当に嬉しかったんだ……善人面かもしれない。けど、それでも、アタシはこの力で世界を救いたい!!
……てなこと書いとけば、少しは理想のヒーローっぽく見えるかな?
あんたの言うヒーローってのがまだイマイチわかってねーんだが……ま、ともかく、アタシはさらなる強い奴を求めて旅を続ける。でも、旅に疲れた時は、また飯でも食いに行ってやるよ。何せ、そこはアタシにとって、帰る故郷になっちまったわけだしな。
じゃ、またいつか!あばよッ!
都の
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手紙に一通り目を通すと、ナナはポタポタと涙を零しながらも、笑みを浮かべた。
「全く、あの人は相変わらずかっこつけで鈍感で戦闘バカなんですから……ええ、もちろん。私はいつまでも待ってますから……また会いましょう!」
顔を上げ、ナナは手紙をそっと机に置くと、窓の外に広がる青い空を見上げた。
清々しい風が、ナナの髪を靡かせた。
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見渡す限り一面岩場で囲まれた荒野の中、バシバシと拳と拳が激しくぶつかり合う音が辺りに鳴り響いていた。
「ひ、ひいいっ!!参った!俺の降参だ!だからもう勘弁してくれえッ!!!」
と、戦いの最中、顎髭を携えた軽装備の男は、尻餅を付き両手を挙げて、相手に降参の意思を見せた。
「ええ……もうおしまいかよ……男の拳法家なんて珍しいと思って手合わせを頼んでみたんだが……まあ、こんなもんかぁ……」
「くそっ、せっかくエロいネーチャンと手合わせ出来るチャンスとばかりに張り切ってたのによぉ……何なんだこの規格外の強さは……」
常人とはあまりにかけ離れた力を持つその茶髪の少女に、男拳法家は額に汗を浮かべながら絶句した。
「これでも手加減してる方なんだが……まあ、それとこれとは別で、手合わせしてくれた事には感謝するよ。ありがとな!んじゃ、そういうことで……」
「お、おい、ちょっと待てよ!俺は
戦いが終わると早々にその場から立ち去ろうとする少女を、八蜘蛛と名乗る男は咄嗟に呼び止め、彼女自身のことを問うた。
その質問に対して、少女は嬉しそうな表情でくるりと振り返り、声を大にしてこう答えた。
「アタシのことは”ダリアの姉御”と呼びなッ!!!」
『解放漢女DAHLIA 』
「第1章BREAD 」…………完
解放漢女 DAHLIA =女子力高い系ファイター= ニカイドン @nikaidon
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