15話 カグツチの切れ味

いやーカグツチの優秀すぎであのチンピラな言葉使いがどうでもよくなるわぁ……


 『なんか言ったか? ファイス』

 

「いんや、なんにも~」


 そして妙に鋭い。でも異世界でも喋る武器ってダイダラさんの驚き様から見て珍しいんだろうな。そして銃。こっちは異世界でも存在しない未来の武器。この二つが合わさってる時点でもう厄介なことが起こる気しかしないなぁ……。なんとか誤魔化せる方法ないかなぁ……。


 「なぁカグツチ。お前、剣とか生やせる?」


 かなり馬鹿らしい質問。


 『あん? ヨユーだぜぇ?』


 「だよなー無理だよなー。どうしよっか? あ?」


 カグツチのバレル底部からサバイバルナイフみたいな刃物が生えていた。


 「うわっ!」


 『うわっとはなんだマイマスター? お前が聞いたんじゃねぇかよ』


 「いやマジで生えるのかと…」


 『銃っての形を固定しちまったから今更剣とかに変化することはできねぇが部分的にならできるぜ。まぁ出来たとしても銃を辞める気なんぞねーがなぁっ!』


 カグツチが万能すぎて怖い。とりあえずこの状態を蜃気楼とでも名付けておこうか……。いやここまで火をイメージしてきたから陽炎にしとこう。多分似たよーな意味だったろーし。


 「カグツチ、その状態のこと、これから陽炎って言うから」


 『あん? この状態で戦うことあんのかぁ? 遠距離からブッパすりゃーいいだろぉ?』


 「あんま銃を広めたくないし、擬態って感じで頼む。変わったナイフみたいな感じで」


 『へぃへぃマイマスターの御心のままにぃ…』


 「あと知らない人の前で喋るな」


 『はぁぁぁ? 俺様に黙れって言うのかぁ? おいおいファイスよぉ? そりゃー無理だって話だぜぇ? だってさみしーーーもんっ!』

 

 お前はガキかっ!


 「喋ったらダイダラさんがアモ用の鉄、くれないかもな」


 『俺様はマイマスターの忠実な僕だからなぁ。マイマスターの願いは聞き入れるぜぇ』


 カグツチちょろいな。


 

 

 そんな感じで河原から帰ってきたら、ダイダラさんの工房の前にオ―ロがいた。たしかどこかに遠征に行くって言ったのに早速来たのだろうか?

 

 「おーぅ、ファイ? お養父様に会えなくて寂しくなかったかぁ?」


 「馬鹿言ってんじゃねーよオ―ロ」


 「馬鹿って……ファイ、しばらく見ない間に口が悪くなったか?」


 「オ―ロにはこれぐらいで丁度いい」


 泣き崩れるフリをするオ―ロ。こいつ何時になったらダイダラさんを諦めるんだ? 

 

 「まぁ冗談はこれぐらいにして、その手に持ってる変わった形のナイフ? でいいのか分からんがなんだ?」


 俺が手に持っていたカグツチを指さして言う。カグツチが震えた気がる。


 「こ、これはかーさんのオリジナル武器でー…貰った」 


 「はー変な形してるナイフだなぁ……。それでいっちょ稽古付けてやろうか?」

 

 カグツチがかなり震えているっ! 震えが強すぎて俺だけの力じゃ隠せない。魔力顕現で焔を纏わせ握力強化に努める。


 「無言で準備とかヤル気入ってるなぁ? 俺が勝ったらダイダラさんとデートする権利を貰うぜ?」

 

「は? いやちょっと」


 いきなりオ―ロが腰から鞘ごと剣を抜いて殴りかかってきた。握力強化だけだった魔力顕現が視力、脚力と次々に強化されていく。いつならオ―ロの剣がぎりぎりで避けられる程度だったのが今は剣を避け、さらにオ―ロの後ろへと回り込んでいた。


 「ちぃ、随分と魔力顕現も巧みになってきたようだな」


 すぐに半身になって剣を目の高さに構えるオ―ロ。俺はカグツチを握ったままボクシングで言うファイティングポーズを構える。すると意外にカグツチの銃剣が真っすぐオ―ロに向いていることに気がついた。このまま殴るイメージで突き出したら剣の突きみたくなるんじゃね? あれ? 意外と擬態としてじゃなく普通に使える気が……


 けん制みたくジャブを撃つように右手を繰り出してみた。


 「はっ! その珍妙なナイフ、お前には向いてるのかもな。さすが俺の嫁ダイダラさん。息子を思って新しい武器を開発するとはっ!」


 左右に首を振ってジャブを避けるオ―ロ。なんかオ―ロから攻撃が減ってる。これはひょっとすると追い込めてる? 調子にノって更にジャブを繰り出す俺。


 「だが、単調だぞっ!」


 右手を伸ばし切った時にオ―ロからカグツチを掬い上げるような一撃を貰った。でもって弾き飛ばされる剣先・・……?

 

 「あ?」


 「へ?」


 カグツチが弾き飛ばされたのでなくカグツチが斬り飛ばしたのだ。オ―ロの剣先を。


 オ―ロも俺も甲高い音を立てて転がる剣先から目が離せなかった。マジか。どーなってんだカグツチは? 


 そのままオ―ロが剣を下げたので流れで俺もカグツチを下し、魔力顕現も解除した。


 「どーなってんだ? そのナイフ?」


 「さ、さぁ? でも凄い切れ味だね」


 「いやそういうレベルじゃない気がするんだが……くそ、今回は俺の負けだ。ファイ。次は負けねぇ! 首を洗ってまってろよっ!」


 なぜかそのまま全力疾走で走り去っていくオ―ロ。いや剣が壊れたんだからダイダラさんの店に行けよ。俺に構わないで行ける口実出来たんだからさ……。


 「お前どーなってんの?」

 

『俺様、デェンウォーブルだぜぇ? 魔剣、聖剣とかの伝説の鉱石だ。普通の鉄に負けるハズがねーだろ常考』


 だからお前そのネタどこで知った? 

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焔転生 ~吹き飛ばされたのは異世界だった?~ 暁人 @akihitosan

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