10話 暇です
一体、ダイダラさんのやる気すいっちはどこにあったんでしょうか? 知らぬ間に押しちゃったみたいで鍛冶仕事の一切を断って工房に籠ってバレル作りに集中している。そのせいでオ―ロら探索者の客も来ない。まぁオ―ロが来てもダイダラさんには会わせないんですけどね。もう軽く生き甲斐になってます。
暇なのでアモの失敗をまとめてみたりした。アモ二号クンが大爆発した理由はオドを込めた時のイメージからして失敗したと仮説する。俺はロケットの爆発をイメージした。それが多分、俺の強すぎるオドのせいでより大きく爆発したのだと考えると、一号は少ないオドは一瞬で蒸発しちゃったからバレルにも何の影響も与えなかったのかな? うーん、やはり実験しないと分かんないなぁ。
しかし変な話だが自分専用銃が作れると思ったら、マテリアルもどきのせいでぬか喜びかよと落胆し、実はマテリアルもどきがアモ素材としては優秀と分かり、研究する気になれば今度はダイダラさんがヤル気になり研究ストップ要請が出た。研究ってこんなもんなのかね?
魔力顕現はいつもやってることだし、オ―ロも来ないから模擬戦闘ごっこも出来ない。誰か暇つぶしできる人来ないかな~?
「失礼しますね。ダイダラさん、頼んでた矢、出来ましたかね?」
誰も来ないと思っていた矢先に鍛冶屋カウンターに響く声。この優しげでイケメンボイスの声の持ち主は……誰だっ!
「えっと誰ですか?」
「おお、君はファイス君でしたね?」
少なくとも俺のことは知っているみたいだ。
「申し遅れました。私はマルタン。探求者連合に居た時ダイダラさんと知り合った狩人の者です」
「これはご丁寧に、僕はファイスです。よろしくお願いします」
はい、よろしくお願いしますと、とても紳士的に対応してくれるマルタン氏。やはりイケメン。余裕がありますな。そして耳がちょっと尖ってる。これは異世界転生物語で有名なエルフってやつですかい?
「それで、ダイダラさんに矢を注文していた筈なのですが、仕上がってありますか?」
矢、ねぇ。ダイダラさんは鍛冶師なのに矢?
「だ、かーさんに聞いてきますので、ちょっと待ってて下さい」
「はい、よろしくお願いします」
ああ、今更ながら俺はダイダラさんが工房に居る時に限り工房の出入りを許可された。てか元々禁止もされていなかったっぽいのだけど、やっぱり集中して作業してる時にうろうろされたら邪魔だろうから基本的に俺一人で対処出来ない時以外は入らないようにしている。
そんなに広いとは言えない工房にところ狭しと剣や槍、盾や兜、はたまた鍋や包丁なども並べてあった。まじでダイダラさん、仕事選ばないのな……
そんな中、ひと際異彩を放つモノがある。炉の隣に掛けてある漆黒の禍々しい気を放つ
「ん? ファイ? どうした? バレルはまだ完成していないぞ?」
「は? ああいや、そうだ。かーさん、マルタンさんから矢の受け取りが来てるよ」
大剣に見とれていたようだ。なんか俺を呼んでいるような……まぁ折れてるから使えないんだけどな。折れてなくとも俺には使えそうにもないが
「ああ、マルタンか。ヤツの使う矢は特別だからな。これだ。持って行ってくれ。それとこいつは試作品だ。使った感想も聞いといてくれ」
渡されたのはかなり短めの鉄棒だった。先端は鋭く尖っており、お尻の方は薄くアルミっぽい矢羽もどきが付いている。これ、もしかしなくともボルトってやつじゃないですかね? でもって使う弓ってのは
これはあれですか? 獲物に刺さったと同時に血抜きするってコンセプトなんですか? しかもご丁寧に返しまで付いてるじゃないですか。殺しにかかってますねこれ。つかこれバレルの技術流用ですね。解ります。
「お待たせしました。こちらがかーさんの作った矢になります。ついでに新作の使用感想も欲しいって言ってました」
「ありがとうございます。ふむ、新作ですか。結構軽くなってしまっていますね。これは風に流されるでしょうが使用してみますね」
あーそっか矢だから軽いのがいいって訳じゃないんだな
「よろしくお願いします」
「では失礼しますね」
「あっ!」
「ん? なにか?」
「暇なんで試射するの付いて行っていいですかっ?」
イケメンエルフ紳士は少し考える素振りをしたあと男の俺でも思わず照れてまうやろっ! と突っ込み入れたくなるような笑顔をしながら言った。
「では、狩りにいきましょうか?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます