3話 ファイス、本を持って家で立つ
ダイダラさんが「不死の
そして俺はダイダラさんの暇さえあれば本を読んで貰おうとしている。ダイダラさんも俺が読書をねだってくるのがよほどうれしいのか、暇な時以外も夜の寝る前の音読タイムというのが増えた。
おかげで俺はメキメキとこの世界の言葉を覚え、喋れるようになっていた。
異世界の言語、ワイリッシュ(まんまだよな)は初めてダイダラさんが音読してくれた不死の
そしてよく言われる『本場に叩き込まれたら引きこもりになるか言葉を覚えるかのどちらか』というのはここガイスでも同じだったみたいだ。ましてや今の俺の身体、赤ん坊だしねっ!
文字が解れば、ダイダラさんの蔵書は俺にとって魅力的だ。今俺の目の前にあるタイトルを端から読みあげてよう。
「『ガイス旅行記~パッツィを訪れて~』『魔物の対処法~パッツィでの生息分布~』、極めつけに『魔力の使い方~魔術を顕現させるまで~』と書いていますっ!」
なんともまぁ異世界であるということを雄弁と文字で教えていただけるこのラインナップっ! これで心が躍らなきゃ転生モノのWeb小説なんてハナから読み込んでないぜっ!
まず、『ガイス旅行記』で解ったことはこのガイスには一つの大きな大陸、ノーデンラントとその周りにちいさな島のいくつかで形成されている。
ノーデンラントは簡単に書けば大きなジャガイモみたいな形でその中心に聖教国、セラフィムを置き、その周囲を三つの大国が囲んでいる。帝国、ガリア。王国、ライン。そして共和国、ラテラル。他にも国はいくつかあるが、ひとまずこの四つの国がガイスを回している。らしい。
次に魔物が本当にいるってことが分かった『魔物の対処法』。まだ俺が戦う訳じゃないし、存在が確認できたということで、とりあえずこっちもここでストップ。そしてやっぱ本命はこれでしょっ!
『魔力の使い方』だ。魔力、魔術が空想の産物でしかなかった世界からの転生者である俺にとってやっぱりファンタジーの重要な
俺の知っている魔法というのは例えば、攻撃魔法の決まった呪文を唱え、相手にぶつける。すると相手は死ぬ。とか、ケガをした仲間に治癒魔法を唱え、回復させる。といった
……と『魔力の使い方』を読むまではそう思っていた時期が僕にもありました。
しかし、残念なことに『魔力の使い方』によると攻撃魔法、治癒魔法のような特定の呪文を唱えるといった魔法は存在しないようだ…。
あまりのショックに本のその場所に放置したまま、ダイダラさんのいるカウンターの方へ向かう。鍛冶とか教えてくれるかもしれないし。うん、鍛冶とかいいじゃないですかっ! 武器は男の子のロマンですよ?
「【 暗きを退け、光を灯せ―――ライト 】ん? ファイ。どした?」
ダイダラさん、今、呪文唱えて、魔法、使ったよね?
「ま、まほう?」
「うん? これは魔力を使って明るくしたんだが・・・それがどうかしたか?」
「おかーさん、魔法つかえるの?」
「うん? ファイだって魔力があるだろう? それとあたしはかぁちゃんと呼んでくれ。そっちがいい」
ダイダラさんなんか変なこだわりがあるようだがそれは置いといて魔力で魔法が使えるのか?
「ファイが何をもって魔法と言ってるのかは知らないが、魔力を使い、想像の“魔”の法則に従って術を顕現させているんだ。
今やった灯りについては言葉で暗くなった光によって部屋を明るくするのを明確にイメージし、魔力を注ぎこんで光として顕現させたんだ。確実に顕現させるのは難しいが、特別難しいことでもないぞ?」
俺は『魔力の使い方』にとんぼ返りした。
「なんだったんだ? ファイのやつ?」
それどころじゃねーっ! 『魔力の使い方』を熟読しなければっ!
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