2話 お家探検と創世神話
ご飯を終えてからは家の中をハイハイで這いずり回る。気持ち的は食後の運動と言ったところだ。ダイダラさんはそんな俺を眺めながらお酒を呑んでいる。今日のお仕事は終了したみたいだ。
この家の間取りはリビングであるこの部屋とリビングの端っこにある石製の踏み板で出来たはしご階段を登ると寝室(ここも床中に本が散らばっている)がある。リビングから家の外に出る前に鍛冶屋カウンターとその先にある頑丈な鉄製の扉で隔離されている何かがある(これは工房だと思う)。それ以外は家の外にあるトイレらしき穴の掘った小屋。ここまでが俺がハイハイやダイダラさん抱っこ輸送によって判明しているダイダラ家の調査結果である。
こじんまりとしている住みやすい家だ。転生前はボロアパートだったし、結構ロフトとかにも憧れあったしね。何と言ってもハイハイで大部分移動できるのがグーっ!
ダイダラさんは危ないこと以外はぶっちゃけ放任主義でほとんどこのリビングにおらず鍛冶屋カウンターか扉の向こうの工房に詰めている。と言うより子供は勝手に育つと思ってる節がある。
だからってほったらかしと言う訳でもない。俺が粗相してしまった時に軽く泣いているとひょっこりと戻ってきて、始末し、ファイはガキなんだから漏らしたって恥ずかしくないんだぞとだけ言ってまた扉の向こう側に戻っていくなんてことがあった。
さすがにまだ自分で粗相を始末することは出来ないので、それからは食前や食後や休憩などでダイダラさんがリビングに居るタイミングにちーちーやぶーぶーしゅゆっと赤ちゃん語でトイレアピールしてトイレにまで運んで貰った。トイレのタイミングを自分で言えるようになっただけでダイダラさんはまた喜んで数日経たない間に木で出来た立派なおまるがリビングに常駐しているので俺が粗相をすることはもうないと言っていいだろう。よかった。
「さーてファイ。そろそろ寝るか。ファイももう喋ったことだし早いような気もするが本でも読んでやろう。明日は依頼もないからな」
「あぃーっ!」
ダイダラさんが本の音読って初めてのイベントだぞっ! やっとこれで文字を覚えられる。しかし、今日は寝ようっ! そうしようっ! ダイダラさん、だっこ~
「ほら、こっちまでおいでファイ。よしよしいい子だ」
ダイダラさんに抱っこされてはしご階段を上り、寝室に着く。寝室はベットが一個しかない。俺は何処で寝るかって? ダイダラさんのおっぱいが俺の布団だよっ! うらやましいだろっ! でもな、裏を返せばダイダラさんの抱き枕になるってことだ……。おっぱいは気持ちいいけど、鍛冶屋のお姉さんの力で抱き締められると時々魂が抜けるんだぜっ! それでも変わってやらんけどなっ!
「おやすみ、ファイ」
「おやうぃ・・・」
ダイダラさんの胸が安心するのか、すぅーっと眠気が来る。まるで自分の中の炎が消えたみたいに…なぁ……
☆☆☆
「ファイ、朝だよ」
「う、あい」
「ファイは寝るもの早ければ起きるのも早いなぁ。うん、いいことだ」
寝るのも火が消えるみたいに早いが起きるのも放火されたボロアパートが燃え上がるスピード並みに目が覚める。おかげで二度寝や起きても毛布でゴロゴロして遅刻した明弘だった時の悪癖はファイスになってから起こりそうもない。起きる時間だって遥かにファイスの方が早いのにだ。もしかして、これって
朝飯はダイダラさん謹製超豪快素材セットを頂き、軽くハイハイして腹ごなししてる間にダイダラさんは部屋中に散らばっている同人誌本じゃなく革張りの立派な本を持ってきて暖炉の前にどっかりと座った。
「ファイ、膝の上に来な。うん、良し。こいつはな、この世界、ガイスの一番大きな大陸であるノーデンラントで起こった神話の戦いを本にしたやつだ。題名は『
遥か昔、神々が気まぐれで作り上げた生き物を自身らが治めるガイスにて解き放した。全ての生き物は互いに争いもせず共存し繁栄していた。だが、一人の神はこの繁栄を偽りの繁栄とし、争いも感情もない世界では神々の統治が失われし時、このガイスも失われるであろうと云い、神々らが治めるガイスを批判した。その神は名はワイズマン。彼の神こそ至高の知の神であった。
しかし神々はワイズマンの言を頑なに受け入れず、遂にワイズマンから神の根源たる
ワイズマンは神の根源こそ奪われたが、園で蓄えられた知は健在であった。そして神々が作りし
そしてワイズマンは
戦いは熾烈、苛烈を極め、神々の先兵は倒れ、信奉者は爆ぜた。そしてガイスに顕現し神々の代弁者である天使と
そして、根源を奪われた神が思い描いた世界であるガイスが再誕した。神々の干渉なく、神々が作り、
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