一章 俺、爆誕!

1話 美人さんはお母さん?

 なんだか、炎に包まれるのって暖かいんだなー。心なしかプ二プ二と頬を突いてくるし…。つか、一回感覚が無くなるほど焼かれたのにまた感覚が蘇ることってあるのか? でもやっぱり、目は開かないし……でも灯りを感じる。うーんこれ、ホントに目が開かないのか? うーん…

 

 突然顔面にとてつもなく柔らかいものが押しつけられる。なんだこの柔らかいものは? 人生でこんなに柔らかいものを体験したことがないぞっ! 

 

 これは死んでいても必ず蘇って確認しなければならないっ! 俺の確信に近い直感は「お」から始まって「い」で終わるものに違いないと第六感ゴーストが囁いている。


 瞼に力を入れてようとして眉間にシワが寄ってる感じがする。


 「~~~~、~~~~~~ー?」


 脇の下から持ち上げられる感じでこれまた浮遊感を感じた。イキナリ目を刺すような痛みと光を感じてゆっくりと瞼が持ち上がり、ぼんやりと銀髪の褐色女性の輪郭を捉えた。ほらっ! やっぱりだっ! やっぱり、おっぱいだったっ! 俺のゴーストは正しかったんだっ! 

 

 じぃーっと眺めていたら、彼女が覗き込んできた。


 お互いに顔を見合わせたままだが、だんだん俺の目のピントが合ってきた。銀髪を無造作にポニーテールしているし、一本立派なアホ毛が生えている。勝気な感じのする意志が強そうな瞳の彼女はぎこちないながらも笑顔を見せてくれていてなんだかホッとした気持ちがした。普通、イキナリ持ち上げられ、覗き込まれるとビビるだろう? ガキんちょだったらチビっちゃうよ。ん? あれこれチビっちゃってない?


 「~ーっ! ~~~~、~~っ~~?」


 美人さんが俺の股間部を見て、にんまりと笑っている。多分、漏らしたなーみたいなこと言ってるんだろうなぁ…。股間が生温かい。なんだか泣けてきちゃうよ…この年になってお漏らしだぜぇ?

 

 「~ー~ー~ーっ! ~~、~~」


 なんて言ってるんだろうか? こんな言語聞いたことないし、俺には喋れそうにない。


 「たあ?だれ? あ?え?


 ……おい、俺はふざけてないぞ。ちゃんと喋れないんだぞ? 


 「あーあーあい?あれ?


 「~~~~、~~~~ー。~~~~っ!」


 美人さんは嬉しそうに俺に語りかけてくる。本当に嬉しそうだった。

 

 ふと思った。バックドラフトならぬガスボンベ大爆発で俺が生きている訳ない。でもって銀髪褐色美人さんが175近く身長のある俺を軽々と持ち上げられるはハズもない。ファンタジーの巨人族とかならまだしもね。でもってこの赤ちゃん語だ。声が出せるのに日本語が出てこないとかあり得ない。


 なんか、芸大時代に読んでいたWeb小説にこんなのあったよなーーー。


 そう、転生モノってやつだ。でも俺、神様とかに会ってないぞ? 



 一月程の時間が流れた。


 やっぱり、俺は転生したらしい。でもって聞いて驚け? 銀髪褐色美人さんはどうやら俺のお母様らしいぞ。こんな美人さんから産まれたニュー明弘さんは容姿に期待できそうだ。でも俺の手の肌はちょっと日焼けしたかな程度の色だ。明らかに肌の色が違う。お父様はとてつもなく色白なんかね?

 

 銀髪褐色美人さんをお母さんとは言いにくいし、俺が喋れるようになるまでは美人さんで通しておこう。美人さんはどーみてもアジア系の顔をしていないが格好は何故かツナギみたいなのを着て、上着部分は腰の所で結んであり、とても魅力的なおっぱい様はチューブトップで隠している。腰に吊るしているのは白銀しろがねのカナヅチだろうか? 美人さん、俺を置いて部屋から出て行くと一定の間隔でカンカンと鐘がなる音が聞こえる。鍛冶師なのかね? 女の人で鍛冶なんぞできるんだろーか? まぁファンタジーか……。


 部屋は石積みの壁で出来ていて、暖炉にでっかいテーブル。隅には普通の家にはまずない大きな鉄板を敷いたゴツイ作業用机。そして電気製品っぽいのは一切なかった。だけどロウソクが所せましとある訳でもない。やっぱありがちな中世時代っぽい所に転生したのだろうか? しかし、中世時代は本が豪華で高いっていうのにこの家の床に散らばっている本は同人誌みたく薄い本だ。ちらっと見てみたがまったく見たことない文字。やっぱり異世界転生なのかな? 魔法とかあったり? わくてかである。

 

 また少しの時間が過ぎた。

 

 美人さんを訪ねていろいろな人達が家を訪れた。みんな俺を見て驚いた顔して美人さんと話し、ついでに俺の頭を撫ぜてくれたり、なんか手を合わせて拝んだりしている。赤ちゃんが産まれたらそのようにする伝統なのかな? あっ、それと転生する前の記憶ってか意志だな。があるせいか、それともこの身体が優秀なのかちょっとずつ美人さんとお客さんの会話から言語が理解できるようになってきた。解るようになったついでに美人さんの名前はダイダラさん。なんか男見たいな名前だ。でもって俺の名前はファイス。ダイダラさんはファイって呼んでる。

 

 「ファイ~何処行った? ファイ~?」


 今、俺はでっかいテーブルの下で床に散らばっていた本の中で絵が多くある本を選びだして眺めていた。理由はまだ一歳にもなってない俺が本を読むような素振りしていたら怪しまれるだろうから。


 「あ~ぃ、こ~こ」


 「ファイ? あんた、ここって言った? ファイ、もう喋れるのかい? すごいねぇっ!」


 ハイハイしてテーブルの下から出てきた俺を掬い上げて猛烈に褒める。そのままクルクル回転を始め出す始末だ。


 「やっぱりファイは半神デミゴットなんだねぇ! あたしも鼻が高いよっ!」


 ちょっと待て、なんだデミゴットって? いやまぁ今はいい。俺は取りあえず普通じゃないってことだ。異世界チート転生モノの主人公のポジションを獲得したようです。どんな能力があるのか知らないけどね。つか、お客さんたち俺に手を合わせてたのってデミゴットだったから? つかじゃーお父様はホンモンの神様なのか? 俺まだ見たことないけどっ!


 「とりあえずファイ、ご飯にしよう」


 ああ、期待していたダイダラさんの母乳っていうご飯はありませんでした。俺としてもとっても残念でしたけど、実際の所、おっぱい丸出しで母乳プレイされる状態になっていたら照れてとてもじゃないが普通の赤ちゃんの振りは出来なかったと確信を持って言える。だからこれでよかったのだ。うん。そうしとこう。


 ダイダラさんは回転を止めて、俺を膝の上に置いて食事の準備を始める。でっかいテーブルの上には空飛ぶお城のアニメに出てきた空賊たちの食事シーンと同じぐらいの食糧が並べてある。そこから土器に入っているミルクとハムっぽい塊をうすーく切って俺の前の皿に置き、自分のは拳大に切った塊をそのまま齧り、革袋に入っているであろうお酒を呷っていた。そう、俺、ダイダラさんから離乳食なんぞもらったことことないのだ。これ、子育て的にはアウトですよね?


 「おいしーなぁファイ?」


 「あぃ~」


 「うんうん、エラいなぁ~ファイは。子育てが大変だなんて冗談みたいだ」


 ダイダラさん、それは俺だからですよ。多分

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