第11話 悪霊の調教の仕方
「なあ、機嫌直せよ」
(フンッ!乙女の顔を見て逃げ出す?普通ありえないよね!?)
いやだって、あの時のお前の顔ったら。
(ああん!?)
「すいません…」
本日のフェイリースさんは随分ご機嫌斜めだ。普段ならここまで怒ることもないんだが。
「…何を見た」
(…………グスッ)
何か泣き出した。
暫く泣き続けていたフェイリースはポツリと「処分されてた」そう短く呟く。
少女はもういいと言いフェイリースの頭を抱え込む。フェイリースは暫く泣き続けていた。
ちょっと気軽に除かせ過ぎたか。反省しないとな。
◇◆◇◆◇◆◇◆
「レイズ!レイズはいるか!?」
少女は館に戻るとすぐに地下に降りゴースト執事を呼ぶ。
すると少女オレの隣にスゥとゴースト執事が現れる。
「何でしょう?」
「お前、奴隷を買って惨殺してたって噂があるんだが、そこんとこどうなんだ?」
「…否定はいたしませぬ」
「そうか…どこから買っていた?」
それを聞いたとたん執事服の全身が燃え始める。
「ニクイ、ニックキ、アノブタメ・・」
瞳孔が崩れ落ち、目の奥が真っ赤に燃え上がる。
―――ゴスッ!
「おごごご、な、なんじゃその本!」
少女は聖書の角でゴーストの頭をどつく。
「いや、聖書だろうと今の私の体に触れることはできないはず?」
(あっ、そういやさっき私の頭を抱いていたよね!?あれ、なんで?こっちからは触れないのに?)
そういう体質だからだろ。つーか前に頭をはたいただろ?もう忘れたのか。鳥頭め。
(誰が鳥頭よっ!?)
「まあ、落ち着け、まずはレイズの話を聞こうか」
ゴーストは執事姿に戻る。
「多くは語れませぬ、冷静には話せぬことゆえ。唯一言、仇であると」
「なるほどな…ううむ、大貴族だな…潰すのは無理か…奴隷市場だけなら…」
(あっ、また私の記憶覗いてる!やめてよもう!)
フェイリースがぽこすかアタックを敢行してくる。まあ、例によって通り抜けるんだが。
(理不尽を感じる!)
そんなこと言われてもな。
フェイリースの記憶では、あの奴隷市場を仕切っているのはこの国で最も資金力のある貴族らしい。
爵位はそれほどでもないが、金に物を言わせてあちこちを牛耳っているようだ。
「レイズ、今のお前でやれるか?」
「無理ですな、死者を千人ほど用意して頂ければ別ですが」
「それは却下だ。争わせる為に用意する死体は無い」
いや、ないことはないのか…?
「レイズ、お前、復讐の為なら冷静にいられる自身はあるか?」
「冷静にいられるぐらいならリッチになぞなっていませぬ」
オレは聖書を持ち上げてブンブン振る。
「さっきコイツで意識が戻ったよな?」
「………………」
◇◆◇◆◇◆◇◆
まったく我が主は人使い、もとい、霊使いが荒い。
アレから特訓と称して、レイズが我を失うたびにゴスゴス殴ってきて…
今その聖書はレイズに括り付けられている。
だが、おかげで多くのことを思い出す事が出来た。
なぜ私がリッチになったのかを。
なぜ私があやつらを憎んでいるのかを。
あやつらは我が娘が欲しいがばかりに犯罪者に仕立て上げ奴隷とし…
―――ビリッ
おっと、聖書が反応してしまったが。
なぜかあれ以来、我を失いそうになるとビリッと来るようになったこの聖書。
主はパブロフの犬みたいだなーとか言っていたが…何のことやら。
ようやく辿り着いたか。
見れば見るほど憎たらしく思える建物だ。
だが、我慢だ…主の言うとおりにしておけば、復讐が敵う。そう復讐が敵うはずだ!
主の言葉通りにしてたった1年、それだけでこの30年近い年月の倍以上の力を手に入れた。
こうして屋敷の外に出られるもの主のおかげだ。…出られないって言うのにむりやり引っ張り出されて…あれは痛かった。まるで魂が引き裂かれるようだった。
コホン、まあ結果オーライである。
いたいた、大量におるわ。
主の言うことでは一日に一人ずつ、もっとも魂の汚れたものから黄泉帰らせるとのことだが…一斉に黄泉帰らせて襲わせればこんなとこあっと言う間なのだが。
まあ、我が主の考えは私などでは推し量れぬ。
そうだな、今日はあいつにしよう。
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