第6話「眠る猫」

 行きつけの古書店をのぞくと、レジカウンターの椅子に座った店主のオヤジが、カウンター台に頬杖ほおづえをして、いつものように居眠りをしていた。

 カウンター台には買い取った古書がうずたかく積まれ、さながら不格好なミニチュアのビル群を形成している。

 その積まれた古書の上には、飼い主同様、老いた三毛猫が丸まって眠っていたのだが、しばらくすると猫は目を覚まし、大欠伸おおあくびを一ついて、そのまま何処かへ行ってしまった。

 もうしばらくすると、今度は店主が目を覚ましたのだが、驚いた事に彼は、腕の先を曲げた猫のような仕草で、顔を数回擦って、更にはペロペロと毛繕けづくろいのような動作をり返す。

 そうして、ようやく客の存在に気がついた店主は、照れ臭そうに笑って、

「ハイ、いらっしゃい!」

 と声をかけるのだった。


(おしまい)

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