「お約束」はどのジャンル小説にもある

 一般の文学文芸には冒頭からのトリセツなどない、と書きました。Web小説においては、そういうのも一つのジャンルでの「お約束」であるというわけですね。

 で、いやいやそうは言っても文学文芸にだって、実は「お約束」があるんではないか?と思い至ったわけです。ラノベしか読まない人が文学を嫌う理由の第一位くらいを占めていそうな、「地味で冗長でワクワクしない冒頭シーン」て確かに多いんですよね。


 空から人が降ってくるとかのアニメチックなイベントが起きることもなく、主人公などの性格やら行動やらのキテレツさが強調されるでもなく、リアルでも起きそうな出来事からとか、リアルでフツーにどこにでも居そうな誰かのクローズアップから始まることが多いなぁと感じます、確かにね。

 キャラでも事件でも個性的にしようと頑張らない、というか。


 で、アニメチックで壮大だったりドラマチックだったりな主題が隠されていそうな空気も匂わないまま、滔々と物語は進んでいきますよね、粛々とと言うべきか。とにかくこの先も地味ですよー、みたいな。


 これそのものが、文学における「お約束」ではないのか?と思ったんですよ。


 そもそも文学は苦手という人は、面白くないからという理由でしょうけど、その面白みってもしかして「夢がある」とかの意味の面白みではないんですか?

「ありえないけど面白い」では?

 まさしく正しいファンタジーの原点ではあるんだけど、ラノベと文学で考えていて決定的に違うものと感じるのは、立脚点というか、描こうとしている対象だと思うんですよ。


 文学はほら「現実世界と、人間という存在を深く掘り下げる」もので、ラノベというかファンタジーは「現実以外の視点から人間を映してみる」だと思うんですよね。


 ドストレート直球勝負が文学で、変化球魔球スローカーブがラノベ、というか。


 文学は、冒頭部の冗長で地味な展開の続いていく中で、読者の頭の中の現実的な、生活やら仕事やら人間関係、悩みとかの引き出しがカタカタカタカタと震えだすわけですが、ラノベはソコじゃないですよね、感応している部位は。


 文学での「お約束」は、冒頭に工夫を凝らして読者の興味を引くことをという事なんじゃないか、という気がしたんですね。文章そのものの工夫とか研鑽以外の努力は別になくていい、というか。

 まぁ、胡坐を掻いてちゃイカンでしょうから、程度こそはあるでしょうけど、ラノベほど心血を注がなくていいという事になってて、それが「お約束」なのではないかな、と思ったという話でした。

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