例題までに過去作を挙げてみる。
旧題『デスゲで俺は最強スライム』(現在カクヨムで更新止まってる『ストラクチャードアムニジア』)を引っ張ってきました。
私の現在の作品しか読んだことがなかったある方が書評で、「こんなのまめ太さんの文章じゃない!(笑」と評してくださったくらいには過去の遺物です。まぁ、二年前のですからねぇ、拙いのはお許しください。
まぁ、読めば何が言いたいかは解かると思います、読めば。
第四話『敵対Ⅰ』
街の外へ出ると、なんだか嫌な雰囲気になっていた。
ルナと姫、それに数人のプレイヤーが、その他の大勢に囲まれてる。
なにかあったか?
「あっ! 景虎!」
「デリー! こっち、こっち、早く!」
なんか緊迫した表情の二人が忙しく呼んでる。ひそひそと、周囲の連中が眉を顰め俺達を睨んでいる。
「奴等もチートかよ、」とか呟く声も聞こえた。
ここでもチート差別か。いい加減にしろ、馬鹿ども。
「なにやってんだよ、デリー。中はヤバいって教えたじゃん!」
こそっと姫が注意を寄越してきた。
え、ちょっと、それ、お前が見て来いって言ったんじゃねーかよ。
言い返そうとした俺の前へ、数人のプレイヤーが居並んだから気勢を削がれた。なんだ?
「お前らもチート持ちなんだろ? こうなった責任取って、さっさと出てってくれないかな。お前らが傍に居ると、どんどんバグが酷くなるんだよ。」
俺の前へ出てきた男性キャラプレイヤーがいきなり言い放った。
連中のリーダーか? いけ好かない野郎だ、薄笑いを浮かべた美形キャラで。なにニヤニヤ笑ってやがる。
長い銀髪を後ろで一つにした細面の顔。何かのアニメキャラと同じメイキングのオッドアイ。金色の右目と赤い左目。長身痩躯、日本人離れな体型をしてる。メイキングでさぞや苦労した事だろう。
仰々しい白銀のアーマーは、確か何かのイベントの優勝賞品だったはずだ。レアアイテムってやつで。
それだけでも気に食わないのに、カッコつけた騎士様気取りのポーズで剣を杖のように両手で支えて立ってる。
ポスターのつもりかよ。俺が主役だとでも言わんばかりだな。
やっかみ半分、元々こういうキャラが好きじゃないのも手伝って、第一印象はサイアクだ。
表情が特に気に食わん。ヤなヤローだ、リア充とDQNは死ね。(私情挟まりまくってマス)
ステータスを見れば、やっぱりな数値が並ぶ。名前は『+ルシフェル+』……中二め。
古参プレイヤーの一人だな、何度か見たことあるぞ。嫌な野郎で、効率の為なら平気で人を踏み台にして、立ち回り下手なヤツをクズ扱いしやがるそうだが、噂通りのヤツらしい。巧いから人気はあるってのがまた不思議だ。
弱肉強食は確かに世の習いだろうけど、それだけでいいってんなら人間やってる必要ねぇだろ。
ニヤニヤ笑ってやがって。正義感だとか、そんなんじゃねぇ。
コイツは堂々と弱い者をいたぶる事が出来るこの機会を楽しんでやがる。エネミーを狩る時の、昂揚感を感じている時の輝きがコイツの瞳には宿っている。
居るんだよなー、こーいう、人の痛みの解からんヤツって。
「今、話し合いをしてたところだ。ようやくまとまってね、全員一致の意見だ。チート使ってるあんた達には出ていってもらう。」
「バグの原因がチートだなんて、いつ解明されたんだ? 検証Wikiとか見たこともねーのか、馬鹿が。」
喧嘩を売ってみれば、オツムがどの程度かも解かるってもんだが。
ニヤニヤ笑いが少し引っ込んだ。
お、怒ってやがる。俺に馬鹿と言われたのが効いたか?
「解明出来てないってだけで、原因じゃないっていう保障もないだろう? 原因かも知れないんだったら、俺達の言ってる事だって間違ってはいない。もし、チートが原因だったらこの先だってどうなるか解からない、割を食うのは俺達、まっとうにゲームしてる善良なプレイヤーなんだよ。」
ヤベぇな。コイツ、論戦しかけるフリして周囲に洗脳かけてやがる。
論点をすり替えやがった、周囲の連中でも乗れるように感情論に変化させるつもりか。
「ふざけんな、そんな理屈でチートの奴等だけ排除して、それで何か問題が片付くってのか? 単なる腹いせか、ストレス回避じゃねぇか。」
「そりゃそうだ、解かってるじゃないか。仲間同士、皆で結束しなきゃいけない場面だよ、今は。だから、ルール違反を平気でするような連中は先に排除しとくって言ってるだけだ。そっちはそっちで、チート同士で仲良くすればいいだろ。特にあんたは強そうだし、心配いらないさ。二組に分かれるだけだよ、一緒だとどうせ巧く行かないだろう?」
しまった。ここで論戦けしかけたのは間違いだった。
周囲の、コイツに輪をかけたバカどもが煽られる。やべぇ。
「俺達は元々チート使いにはいい感情を抱いていないんだ、そっちも一緒に居ても居心地が悪いだけだと思うよ? 一緒になればきっと揉めるだろう、纏まるものも纏まらない、そうは思わないか? 心配しなくても、最終攻略の時には君たちも呼ぶ予定さ。見捨てられると思って反対してるんだろう? そんな悪どい真似、するわけがないさ。 なぁ、皆。」
コイツ……!
解かっててやってやがる、自分が何をしてるか、解かって扇動して……、なんて性格の悪い野郎だ。
そうだそうだ、とか、無責任なヤジが飛び始める。お前ら、何を言われたか、解かってねぇだろ。
異常事態に人々の冷静さが失われているとはいえ、あまりにも短絡だ。一部に過激分子が居るんだろうが。
だったら、良識派が押しのけられて沈黙しているなら、この状態も頷ける。後ろの方の連中は、申し訳なさそうな顔で俯いてる。扇動に乗る連中なんてのは、単純思考の奴等と相場は決まってる、か。くそったれ。
「こっちは、棲み分けの提案をしてるだけだ。このサーバー暴走の原因かも知れない連中とは、俺達は一緒に行動したくないんだ。ちょうどこの街を境に、こっちのフィールドと向こうのフィールドとは別になってるんだから、いいだろ? そっちはそっちで勝手にやってくれればいい。俺達は俺達でこの事態に対処する。……ま、そっちは見たところ、十数人しか居ないみたいだけど?」
残虐な笑いが奴の顔に浮かんだ。
解かってて言うのかよ。この少人数じゃ、どうやったって、あのレイドボスには勝てないって。
誰も気付いていない、こいつの目が、とんでもなく楽しそうだって事に。
間違いなく、こいつは俺達を見捨てるつもりだ。隔離だけじゃなく、そこまでやる気なのか。
「それでなくてもログアウト地点が酷い事になってる、これ以上、お前たちが居れば何が起きるか解からないんだ。俺達は関係ないんだから、巻き込まれたくないって思うのは当然だろ? お前たちが自分で今回の責任を取るべきだ、そうだろ? チート武器と一緒に、さっさと荷物纏めてこの地から消えてくれ。これはもう、決定事項なんだ。皆で決めたんだ。」
どいつもこいつも。くそったれども。
マトモな判断が出来る奴らは沈黙し、熱に浮かされた奴らが声を荒げてやがる。
被害妄想が凶悪な思考を後押ししてる。
くそ、多勢に無勢か。
じりじりと包囲を狭める阿呆共が、今にも武器を手に襲い掛かってきそうな勢いだ。
正直、何人居ようが負ける気はしないが、俺が殴ったらリアル死確実だ。それは絶対に駄目だ。
勝ち誇ったヤツの宣言が場に響く。
「チートやってる奴らがどうなろうが自業自得だろうけど、俺達まで巻き込まれるのは迷惑だ。そうだろ、皆。」
やられた、完全にアウェーの空気が出来上がった。
"出て行け"のヒュプレヒコールが湧き上がり、次第に大きくなる。
「景虎、もういいよ、行こうよ。あたし達が悪いんだもん、ルール違反はほんとだもん、」
泣きながら、ルナが俺の腕にしがみつく。
他の連中も本気で奴に賛同している。見知らぬ女戦士が大きく頷く姿が目に止まった。
なに頷いてやがる、お前ら自分が"何に"加担しようとしてるのか、解かってねぇだろが。
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