第14話 NBAバスケットボール
スカウトと何度も話していた1961年頃のNBAは大変な年でした。バスケット自体の人気も急上昇し、観客数も150万人に届く勢いでした。特にビル・ラッセル率いるボストン・セルテックスがウィルト・チェンバレン率いるフィラデルフィア・ウォリアーズと熾烈な戦いを演じ、イーストカンファレンスで優勝するとウェストカンファレンスの優勝チームであるミネソタ・レーカーズとファイナルを戦い優勝しました。セルティックファンにとっては至福の時を迎えました。しかも、得点王はウィルト・チェンバレンに奪われたものの、最優秀選手にビル・ラッセルが選ばれていたのです。ようやく普及し始めたテレビでの放映日には熱狂的な家族が近所のテレビを買った家族と大騒ぎをする習慣も根付いて来た事もあって、バスケットボール熱は最高潮に達していました。さらにポストシーズンでは、ボストンありとあらゆる場面でセルティックが誰をドラフトするかが、挨拶がわりによく話されていました。
チャールズ・オズボーンヘッドコーチとケビンは一緒にセルティックスのスカウトと話し合いました。スカウトもビル・ラッセルと今回の優勝で「強いセルティックス」を全面にだし、ケビンを引こうと躍起になっていました。ケビンにとって何を選択の基準にして良いのかは、正直な話、あまりはっきりしていません。ただ、提示されるドラフトの金額も膨大な額で、正直言って雲をつかむ話でした。オズボーンヘッドコーチと話し合って、ケビンのプレイスタイルに一番良くあったチームを選ぶ事にしましたが、セルティックスのスカウトも、他のチームのスカウトも同じ様な事を言ってケビンを説得しようとしました。ただ、このスカウトはマイカンさんとデポール大学のアスレティック・センターでオネスティー・マッチでケビンが行ったフリースローラインからのジャンプシュートを観ていた本人だったのです。とてつもないその記憶は忘れられるものではありません。その当時から「目を付けていた」、という事で、「覚えてくれたんだ!」、と好印象をケビンは持ちました。彼は帰りの飛行機の時間を忘れる程、その時の話に夢中になっていたのも、ケビンの気を引きました。
ミミとも相談しましたが、まだ、何処かの会社に就職する選択もあり、プロの世界でプレイするとは100%決めていない自分には相談に乗り様がない様でした。マイカンさんに言われた様に結局決めるのは自分ですし、失敗して後悔するのも自分です。それに、ドラフトですから希望しないチームがクジをひくこともあり得るわけです。(最もこの当時のドラフトは、事前にチーム同士で話し合いが出来ている事が多く、ほとんどの場合、意中の選手を獲得しています。しかし、経験のないケビンは、その辺りのプロのやり方を熟知していたわけではありません。)ミミとエイドリアンじいさんと何度も話し合った結果、結局、家族中がファンであり、家族のアイリッシュ系を象徴しており、さらに、親友(と、呼ぶのは失礼でしょうが…)のマイカンさんの推薦もあるボストン・セルティックスに決めました。その年、 シカゴ・パッカーズから全体1位指名を受けた ウォルト・ベラミーやトム・メシェリーらがNBA入りを果たしています。これから、ライバルになる選手たちです。
セルティックスは長期な展望の下にさらなる栄光の延長を狙い、ボブ・クージー、ビル・シャーマン、ビル・ラッセル体制から、ビル・ラッセル、トム・ヘインソーン、サム・ジョーンズそしてケビン・マクドナルド体制へと移行してゆく計画がケビンの入団の際に発表されました。これはビル・ラッセルを中心選手におき、ケビンの加入もあって「若返り」。を図ったと、言っても良いでしょう。8月のうだる様な暑さの日にケビンはボストンで契約を済ませ戻ってきました。ミミは大学が夏休みで十分に二人の時間を過ごしました。「お帰り、ケビン」「ミミ、ボストンへ行ってきた。契約しに。その時、誰に会ったと思う?丁度。契約延長に来ていたビル・ラッセルと会ったよ」。これを聞いたミミは、ちょっとした違和感を感じた。それは、ケビンと時間があれば見ていたボストン・セルティックスの試合に出ているヤングスーパースターのビル・ラッセルとケビンは会っていたのです。何か、ケビンが「向こう側」に行ってしまったと感じたのです。ケビンは続けます。「9月の終わりからキャンプインが始まるので、いよいよ、プロの選手と一緒にプレーが出来る」。ミミは「なんだか、遠くの人になる見みたい。プロの選手になったら、四六時中、管理されるのでしょう?」。「大丈夫。オハイオ州立大からでも、ちゃんと郵便だけど会話したじゃない。シカゴにはパッカーズ(1966年にブルズが設立される前のチーム)のユナイテッドセンターがあるから、会いに来れるし、心配無いって。淋しくなるのは僕も同じだから…」その時、ミミの目に涙が薄っすら光っていたのをケビンは覚えていたそうです。
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