第10話 バスケットボールの人気急上昇

バスケットボールは、テレビの普及とともに人気が急上昇しました。全国で行われるNBAの試合を見ることができました。ケビンにとって悲しいことはマイカンさんの引退の噂が流れ、どうやら事実のようでした。エイドリアンじいさんも会ったことがありますので残念がっています。1956年のことでケビンは17歳の時です。マイカンさんは今年、9年NBAでプレーしたことになるのですが、ミネアポリス・レイカーズを5回のチャンピオンシップ優勝に貢献したことになります。


エイドリアンじいさんやケビンはその当時、ミネアポリス・レイカーズがマイカンさんのつながりで好きでしたが、もうひとつ応援しているチームがありました。ボストンのセルティックス(ケルト人のチームという意味。ケルト人は古代ローマ人からはガリア人とも呼ばれ昔、中央アジアから馬車に乗ってヨーロッパに移った民族でアイルランドに多く住み着いた人種)というチームです。有能な若手が多く入団し若くて「粋のいい」チームでした。特に、ビル・ラッセルという若い選手が素晴らしいのです。それに、ボブ・クージーというスーパースターがいました。しかし、応援をするきっかけはそのチームのロゴにあります。エイドリアンじいさんがシャムロック・スターの名づけ親であることもあるのですが、アイルランドの象徴であるシャムロックをマークにしていたのがきっかけです。それに、レプラコーンと呼ばれる緑の服とズボン、帽子といういでたちにヒゲを顔中にはやした男の靴職人でアイルランドの妖精がマスコットなのです。このレプラコーンをマスコットにするなんて、ちょっと変わったチームなのです。レプラコーンはどう見ても強そうではないし可愛くもないのです。ただのアイルランド人の服装をした「ダサい」ヒゲおやじという感じです。しかし、アイリッシュ系のエイドリアンじいさんはこのマスコットとボストンセルティックスをこよなく好きでした。去年のケビンからのクリスマスプレゼントはセルティクスの野球帽でとても喜んでいました。今では毎日、この帽子をかぶってアーリントン・パークに通っています。


NBAの人気の急上昇とともにケビンのハイスクールや大学バスケットボールリーグにも地元のファンを中心として人気が鰻上りとなりました。ケビンはどこに行っても人気者でした。プロではないのでサインを求められたり写真を撮られたりするようなことはありませんが、気軽に話しかけてくる人や、子供からの握手は気分を明るくしました。ハイスクールには専属のスポーツグッズ店が入っていて何でも買えましたが、ケビンはミミとよく地元の小さなスポーツ点で買い物するのが好きでした。練習着やシューズですが、そこの親父さんが面白い人で靴下を買いに行っただけなのに3時間も話し込んだこともあります。また、ミミもバスケットボールやベースボールの情報を交換していました。有名になったケビンには無名のころからやさしく、また親しくしてくれた「友人」でした。この親父もケビンとミミを「ビッグマック」 「ビッグハナ」、と呼んでいました。どこでそんな情報を仕入れるのか知りませんが…。


ハミルトンコーチがポジションを確認したり新人を試したり、新しいフォーメーションを確認するための練習試合では負けることもありましたが、公式戦では町をあげての応援とともに勝ち続けました。ケビンも全国に名前が有名になったことと、大学に進むかプロに入るかの進路を決める時期になっていましたので、いろいろな人が、主にスカウトですが、コンタクトしてくるようになりました。ハミルトンコーチとも相談しながら、またエイドリアンじいさんやクリスティーナに相談しながら進路の選択肢を検討していました。それに、スポーツ生命はほぼ10年で、その後のことも考えておかなくてはなりません。また、大学に進むにしても、プロに進むにしても、ミミと会えなくなることも考えました。勿論、ミミと分かれるつもりは毛頭ありません。しかし、ミミはハイスクールがあり、遠距離交際での障害を考えなくてはなりません。考えをまとめようとしてもハイスクール・チャンピオンシップを優勝で飾ってから誘いが来ている大学が23校、プロが4チームもありましたし、勉学の道もありました。エイドリアンじいさんは「贅沢な悩みだ」、と言っていましたが、ケビンには勿論、重要な岐路に立っていましたから、毎日、このことを考えない日はありませんでした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る