第19話  エルフを助けにⅢ


 俺は奴から逃げながら、素直に仲間に協力を求めた。俺たちは人間なんだ。一人で勝てなくても、みんなで協力して勝てばいい。協力することで、個々の力は足し算ではなく、掛け算で膨れ上がる。それこそが人間の強さだ。


「昇さんはケガを治してください」

 ミノタウロスの相手をしながら、エルシドが気遣ってくれる。


「今、治しますね~」

 シースが優しく俺を抱擁し、傷を治してくれる。


「私たちに任せて、昇はゆっくり休んでなさい。ファイア・レイン」

 ミノタウロスに魔法を放ちながら、エルフィーが心配してくれる。


「昇君大丈夫? 回復したら、みんなであいつをやっつけよう」

 そう言いながら、ヨイチは弓を連射する。


 3人を相手に、奴は互角以上に戦っている。重装備のエルシドでも、奴の強力な攻撃は受けきれない。魔法や弓もたいしてダメージを与えられていないようだ。完全に回復した俺も戦いに加わる。


 近接戦闘をエルシドと俺とヨイチが協力することで、エルフィーが上級魔法を使う時間をかせぐ。奴はエルフィーに攻撃しようとするが、俺たちがそれを防ぐ。エルフィーの魔力が高まっていく。


「サンダーボルト」


 強力な雷がミノタウロスに落ちた。奴の動きが止まる。さすがに効いているようだ。


「火炎切り」

「連続切り」

「ショットガン」


 そこに、それぞれが攻撃スキルを叩き込む。奴が倒れた。死んだとは思うが、念のため、俺が火炎切りで、細切れにした後、灰にした。


 この戦いを経て、一人の力の小ささと、仲間と協力する力の大きさを俺は理解した。


 雑魚の残りは、俺たちがミノタウロスと戦っている間に、エルフたちが始末してくれていた。

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