第18話  エルフを助けにⅡ


 俺は足に加速魔法をかける。敵との距離を詰め、高速で5太刀。5体の首が飛んだ。魔法の効果もあり、魔物にとっては、ほぼ一瞬の出来事のように感じただろう。慌てた魔物に立て直す隙を与えず、次々と殺していく。敵の魔法使いがファイアボールを放った。


「ファイアボール」


 俺も同じ魔法を使う。炎の玉同士がぶつかる。俺のファイアボールは敵のそれを飲み込み、魔法使いに直撃した。魔法使いは消し炭になった。同じ魔法といえど、魔法の威力は使う者の攻撃魔力で大きく威力が変わるのだ。


 人型の魔物は俺が全員始末した。森を進んで行くと、敵の本隊と思われる部隊と、エルフたちが交戦していた。


 俺たちも戦闘に加わることにした。


「みんなは雑魚を始末してくれ。俺はあいつとやる」


 俺は魔物の部隊の中でひときわ存在感を放つミノタウロスの魔物を指さしながら言った。あいつがボスで間違いないだろう。


「分かったわ。今の昇なら心配ないとは思うけど、油断はしないでね」

「昇さん。危なくなったら、すぐ知らせてください」

「大丈夫だと信じてますけど、無理はしないでくださいね~」

「今の君ならあんな奴に負けはしないよ。でも万が一ってこともあるから、油断は禁物だよ」

「ああ、ありがとう。みんなも気をつけてくれ。じゃあ、行くぞ!」


 俺はミノタウロスの魔物に後ろから声をかけ、正々堂々と戦いを挑んだ。


「ふむ、武人としての誇りはあるようだな。といっても、俺はとっくに気づいていたがな。せめてもの礼として、苦しまないように殺してやろう」

「それは、ありがたいこって。だけど、死ぬのはお前だ。悪いな」

「ふん、人間ごときが調子に乗るなよ」


 そう言いながら、ミノタウロスは右手に持っているでかい斧で攻撃してきた。盾で受けるが、威力が強すぎる。俺の身体は吹っ飛ばされ、木に叩き付けられた。ミノタウロスは見た目以上に怪力だ。攻撃は受けるんじゃなくて、かわすようにしよう。


 吹っ飛んだ俺に追撃するミノタウロス。俺はその攻撃をかろうじてかわし、体制をととのえる。一発の威力は大きいものの、攻撃の間隔が長く、大味な攻撃のためかわしやすい。


「ファイアボール」

「ふん、こんなものが俺に効くか!」


 俺が放ったファイアボールが、奴が作り出した魔壁に跳ね返され俺に直撃した。一瞬、前が見えなくなる。見えた時には、奴の斧が目の前だった。あわてて、盾で受ける。虚をつかれたこともあり、万全な状態では受けられなかった。俺は吹っ飛びながら転がって体制が大きく崩れた。


 その隙を奴が見逃すはずもなく、素早く近寄って斧を振り下ろす。俺は避けきれずに、攻撃を体に受けてしまった。上等の鎧を切り裂き、俺の胸を1センチほど切った。この鎧の防御力がほんの少し低かったら、俺は死んでいただろう。こいつに一人で勝てると思うなんて、うぬぼれていたようだ。


 人間の最大の武器は、他人と協力できることだ。そんな当たり前のことに気づかされた。


「みんな、すまない。協力してくれ」

 

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