第17話  エルフを助けに



 俺が驚いていると、全員が俺の隣で寝たいと言い出した。穏便にすませるため、くじを作ってみんなで引いた。結果、俺の隣はシースとエルフィーに決まった。


「じゃあ、今日はもう寝よう。みんな、お休み」


 就寝の挨拶をしてから5分位たっただろうか。シースが寝がえりをうち、俺の身体に当たる。シースの柔らかい体の感触が気持ちよくて、うとうとしていると、今度はエルフィーも俺の身体にくっついてきた。エルフィーは肉感的な体ではないものの、エルフ独特の肌の感触が気持ちいい。それに、香りも人間とは違う独特のもので、なんともいえない良い香りである。


 そんな状況で、俺は気持ちよく眠りにおちた。


 次の日は、朝食を終え、村民たちとあいさつを交わし、馬車に乗ってプルーメ王国に帰ってきた。途中、何回か魔物と戦ったが楽勝だった。


 プルーメ王国に戻った俺は、その日から厳しい鍛錬を重ねた。魅力値が105になっていて、アレクと稽古ができるようになったのも大きかった。ポポタン村に行く前の、3倍から5倍の厳しい稽古を重ねた。1か月が過ぎるころには、自分でもはっきり分かるくらいに強くなっていた。新しい魔法やスキルもたくさん身に着けた。


「勇者様。我が軍の兵士が探索したところ、ここからそう遠くないエルフの里が、魔物に襲われているようなのです」

「それは心配だね。僕たちがその魔物を退治するよ」

「ありがとうございます。勇者様に頼ってばかりで、申し訳ありません」

「いや、立派な部屋や装備を用意してもらってるし、そんなに気にしなくてもいいよ」

「お心づかい、感謝いたします」


 こうして、俺たちはエルフの里に行くことにした。今の俺の魅力値は130だから、アレクやリョフを連れていくこともできるのだが、彼女たちは強すぎて、俺の腕試しにならない。


 俺は、ポポタン村の時と同じメンバーでエルフの里に向かった。


 エルフの里に向かう途中、魔物に襲われたが俺たちの敵ではなかった。


「魔物が出ました」


 御者の声で俺たちが馬車から出ると、赤黒いクマの魔物が一頭いた。ポポタン村に行く途中、俺が苦戦した魔物だ。


「こいつは俺一人でやる。みんなは手を出さないでくれ」


 俺の成長を知っている4人は、俺を信頼して、安心して俺に任せてくれた。


 魔法などは使わずに、近接戦闘で倒そう。


 クマの魔物の近くに行く。クマが右腕で攻撃をしてくる。避けてもいいのだが、あえて盾で受け止める。前は吹っ飛ばされたが、今度は逆に俺がクマの右腕を押し返した。驚きながらも、今度は左腕で攻撃してきた。その左腕を切り飛ばす。クマが吠え、襲ってきた。


「乱れ切り」


 初歩的なスキルでクマの魔物を細切れにした。前は一人では勝てたかどうかわからない魔物に完勝したことで、強くなったことを実感した。馬車に戻ると、みんなが祝福してくれた。


 そういえば、今のクマの魔物やオオカミ型、人型の赤黒い魔物には、共通して額に紋章があった。これらの魔物が全く無関係とは思えない。オ・ジーさんも知らなかったし、もともとここら辺にいる魔物ではないようだ。といっても、考えても答えは出ない。これ以上考えても仕方がないな。


 俺たちを乗せた馬車はエルフの森に着いた。ここからは歩いて森の中を進もう。


 森の中で、おそらく本隊とはぐれたと思われる人型の魔物を30体ほど見つけた。相手もこちらに気づいたようだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る