第16話  色欲のアスモデウス

 その時、ボスに弓矢と火の玉が当たった。その隙になんとか攻撃を避けることが出来た。


「大丈夫ですか? 私が時間をかせぎます! シース! 昇さんを回復してくれ!」


 エルシドがボスに切りかかる。その間に、シースは俺を包み込むように抱き込んで、回復してくれる。


「フレイム・トルネード」

「ファイア・ショット」


 小型の炎の竜巻と、炎の弓矢がボスに直撃する。ボスは回復しようとするものの、エルシドが攻撃を仕掛け、その隙を与えない。


 ボスが狙いをエルフィーに絞り、攻撃を仕掛けるも、ヨイチが槍で攻撃を受け止める。ボスの後ろからエルシドが切りかかる。その隙にエルフィーが風魔法で攻撃する。


 俺一人ではあんなに苦戦したボスを相手に、3人は優位に戦闘を運んでいる。


「サンダー・トルネード!」


 エルシドとヨイチを相手にして、弱ったボスにエルフィーが止めを刺した。


 こうして、俺の実戦デビューの日は、少し苦い結果に終わってしまった。自分の力のなさが情けない。この悔しさをバネにもっと強くなろう。俺は、もっと厳しく自分を鍛える決意をした。




――所変わり、ミノタウロスの魔将がいる場所


「む? ピン・マーの気配が消えたな。まさか、人間ごときに殺されたのだろうか? おい、テレパシーをアスモデウス様につなげろ」


 ミノタウロスの魔物が、手下の魔術師に、テレパシーを使わせる。


「アスモデウス様、今ご都合はよろしいでしょうか?」

「なんだ、ジン・ニン。俺は今気に入ってるメスと楽しんでいる最中なんだ。終わったらこっちから連絡する」

「これは申し訳ありません。お待ちしております」


 ミノタウロスの魔物が待っていると、テレパシーが来たようだ。


「それで、何の用だ?」

「はっ。それが私の部下が人間に殺されたようでして」

「ふむ。それで、メスを奪われでもしたのか?」

「いえ、そういうわけではないのですが、食料の供給が減ってしまうと思いまして」

「なんだ、そんなことか。メスに関係ないことでいちいち俺様に連絡をいれるな。そんな暇があるなら、さっさとメス共を俺の城に連れてこい! じゃあな」


 ミノタウロスの魔物はおびえた様子だ。


「まずいな。たしかに、しばらくメスを献上できてなかったからな。早く多くのメスを手に入れなければ……」



――ポポタン村


 戦闘の後、俺たちが休憩しているところに、村民たちがやってきた。


「おお、本当に魔物のボスを退治していただけたんですね。真にありがとうございます。もうすぐ日が暮れます。今日はこの村にお泊りください。大した村ではないですが、精いっぱいもてなさせていただきます」

「ありがとうございます。もうくたくたなので助かります」


 俺たちは村長の勧め通り、ポポタン村に一泊することにした。隠し持っていた食材をありったけ使った、豪華とはいえないながらも心のこもった料理を食べて、元気が出てきた。なにより、村民たちの感謝の言葉が嬉しかった。


「勇者様。お泊りのことについてですが、この村で一番豪華な建物である、集会所でよろしいでしょうか?」

「ええ、ありがとうございます。そこでかまいません」

「大部屋で、仕切りなどはないのですが、よろしいですか?」


 俺たち5人は顔を見合わせた。


「私はそれでいいわよ」

「私もかまいません~」

「僕も問題ないよ」

「私も大丈夫です」


「では村長さん、そこで寝ます」

「分かりました。この村で一番きれいな寝具を用意しておきます」


 食事の後で集会所に向かった。布団が5つ用意されていた。


「じゃあ、明日に備えて寝ようか」

「あの、昇。……隣で寝てもいい?」


 エルフィーが頬を赤らめながら聞いてきた。


「僕も昇君のとなりがいいなー」

「私も昇さんの隣がいいです~」

「私だって昇さんの隣がいい」

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