第13話 初めての実戦

一歩通行の魔壁 ワンウェイウォール

 エルシドが、馬車も含めて俺たち全員の周りに魔法の壁を張った。オオカミ達はその壁を越えられないが、俺たちの魔法や矢は通過するので、安全に殲滅できた。


「ありがとう、エルシド」

「いえ、これくらいなんてことないですよ。昇さんは初めての戦闘だから、安全に戦ってもらいたくって」

「そうか。その気遣いがうれしいよ。ありがとう」

「えへへ」

エルシドは嬉しそうにはにかんだ。彼女は初めて会った時よりも、だいぶ親し気な態度をとってくれるようになった。


 馬車に戻ると、今度はエルフィーとヨイチに挟まれる席になった。なんだかわざと身体を押し付けられている気がする。


数分後、またも魔物が出たと知らされ、外に出ると、今度は赤黒く、体の大きいオオカミの魔物の群れだった。先ほどと同じ戦法を取るものの、今度の魔物は耐久力もあり、頭も回るらしく、こちらの攻撃を1、2発受けて、魔壁を破れないことを悟ると、大きく距離を取って、こちらの様子をうかがっている。


「もうすぐ魔力が溜まるわ。あんな奴らならこの魔法で十分ね」


 エルフィーの魔力が高まっていく。


「ハリケーン・リッパー」


 エルフィーが呪文を唱えると、オオカミの魔物達の中心に竜巻が現れ、一瞬で全ての魔物を巻き込んだ。魔物は風の刃に切り裂かれ、細切れになった。


「すごいじゃないか、エルフィー」

「ふふん、私の力はまだまだこんなもんじゃないわよ」


 そう言いながらも、エルフィーは嬉しそうな顔をする。


 しかし、オ・ジーさんに聞いていた、ここら辺に出没する魔物とは違うのが気にかかる。強さも、先ほどのオオカミの魔物とは段違いだ。


 馬車に乗って数分後、またも魔物が出たらしいので外に出ると、今度は赤黒いクマの魔物1匹だった。


「よし、こいつは俺一人で戦う。力を試すにはちょうどいいだろう。もし、危なくなったら加勢してくれ」


 4人は、心配そうな顔をしながらも、俺の意思を尊重してくれた。クマが俺に向かって走ってくる。


「ファイアボール」


 俺が魔法を放つも、よけられる。だが、体制は崩せた。そこに切りかかるも、踏み込みが浅かったせいか、よけられた。今度はクマが右腕で攻撃してきた。盾で受ける。ものすごい衝撃だ。俺の身体は数メートル吹っ飛ばされた。クマに追撃され、体をひっかかれた。ものすごく痛い。距離を取り、攻撃魔法でけん制しながら回復魔法を使う。


「昇さん、恐らくこいつはただの魔物じゃない。私たちも手伝います」

「分かった。情けないが、頼む」





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 ここまでお読みいただきありがとうございます。


 14話の投稿は、31日の朝7時頃に考えています。


 


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今後もよろしくお願いします。

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