第15話 出発

「そもそも、月の武具というのはすべての勇者に与えられた勇者の武器だ。だから、七つの月の武具が存在し、すべてを月の武具シリーズと呼んでいる。それで、その月の武具シリーズの決められた武器を所持する際には、使用契約を結ばなければいけないのだ」

「使用契約?」

「そう、使用契約。この契約を結ばなければ勇者が月の武具を所持することはできないし、たとえ所持できたとしても本来の月の武具の力を発揮することは出来ない」

「なるほど」

「だから……さっさと、契約しろ!」


彼女は契約しろ! と強い口調で言い、席を立ち僕のほうへと近づいてきた。そして、「覚悟しろよ?」と顔を赤らめながら小さな声で言うと思ったら……


「―――!」

「―――!?」


僕の口に、キスをしてくるではないか。


「えっ!?」 一番驚いているのは王様らしく、大きな声を上げている。

本来であれば、僕が一番驚くべきなのだろうが、僕はあまりにも突然の出来事だったので、何も反応できず、ただキスをした後すごく顔を真っ赤にしている彼女の顔を見つめるだけしかできなかった。

そして、混乱というのもすこい引いていきキスされたことをしっかりと認識できるまでになると、ようやく言葉に近い何かを言えるようになった。


「っうぅぇ?」

自分ながら、どうやってこれを発音したのかは分からない。ただ、人間驚いて混乱してしまうと人間らしいことなんて忘れてしまうのかもしれない。


「勇者よ」 赤い顔を落ち着かせて、冷静ないつもの顔に戻った彼女は僕の役職を言う。

「……にゃんでしょうか?」 呂律すらしっかりと回っていない。

「契約は無事終了した。これで、私はお前だけの武器だ」


なぜだろう……武器以外にも違う意味に聞こえてしまう「お前だけの」という言葉の響き。

ただ僕は茫然と、彼女の言葉を聞き、彼女の顔を眺めている。


「まっ、まぁ、契約が終わったことは良かった。うん、良かった良かった。じゃあ、早速魔王討伐に出てくれ」


王様はそう言ってきた。


「勇者、行くぞ」

「は、はい」


なんか、無理やり感があってなんかものすごく適当に流された感があるけれども魔王討伐に行けといわれたから、とりあえず行くことにしよう。


僕たちは、食堂からエルメンターに乗り城の下まで降りて、城の外へ出た。するとそこには、昔教育生だった時にのった馬車の小さい版が止められていた。

王様は、僕たちの方を見て話し始めた。

「支給品は、この馬車と地図と1万ゴールドと少しの食料を渡す。次向かうべき場所はとりあえずセルムーンへ向かえ。分かったな?」

「分かったというかは、まぁ分かったことにしますけれども、兵士の人も何人かついていくんじゃないんですか?」

「頼んだぞ勇者よ。この世界から魔物を追い払うのだ!」

「あっ、無視な方向ですか」


王様に無視をされてしまったので、とりあえずさっさとセルムーンに向かおうと思う。場所は知っているからな。

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