第13話 喜びの声
「やぁ」
「『やぁ』じゃないですよ王様。何してるんですか?」
「いや、だってやっぱり君の武器だから、立場的には私より上なんだよね」
「えっ? 王様よりもこの娘の方が立場が上なんですか?」
「そうりゃそうだよ。だって、この世界を解放した勇者の武器だよ? そんな武器に対して、まだ数10年しか生きていない王如きが、生意気な口きける訳ないじゃないか」
「そういうもんなんですか……というか王様」
「何?」
「王様って、素だとそんなしゃべり方なんですね」
「……良きにはからうがよい」
「今更遅いですよ」
メイドさんたちは、テーブルメイクをしてくれている。僕は、初めてテーブルメイクというもの見ている。王様は、とりあえず無言でそれを見つめて、月の武具のほうはきらきらとした目で「ごはんまだかな!」といったりしている。
人を疑ったりするのはあまり好きじゃないけれども、この娘に関しては例外としよう。
だって、16歳にしては身長が小さすぎるし、幼すぎる。さらに言うとおっさん臭い言動も、彼女の年齢を分からなくしている一つの原因でもある。
「王様」
「ん?」
「王様は、この娘……月の武具があった月の間に入ったのは最近なんですよね?」
「そうだけれど?」
「その前に、この娘について話とかって聞かされなかったんですか?」
「全くなかったね」
「そうですか……」
やっぱり、不思議だ。あそこの部屋は、外部の魔法が干渉できないようになっている部屋だといっていたから、あの部屋に入るには王様と僕がさっき入ったあの出入り口でしかできないはずだ。それなのに、彼女は月の武具の形をしながら、月の間に突然現れることが出来た。元々、この部屋に存在していないものが現れるというのは、たとえ人間でも道具であっても魔法を使わなければ現れることができないはずだ。それも外部で魔法を使ってはいるしかない。それであれば、なぜ彼女は外部から魔法をつくことが出来るんだろうか?
ただ、彼女は「待ちくたびれた」とも言っていた。ということは、彼女は擬態系の魔法を使ってあの部屋に姿を隠してたという可能性もある。そうすると、彼女は言ったどこで待っていたのだろう?
どんどんと考えると、頭がいたくなってくる、お腹も空いてくるな……。
「食事の方、準備できました」
「おっ!」
メイドの人が食事の準備ができたことを告げると、彼女は喜びの声を上げた。
「勇者よ! お前も食べるがよい」
ここは、彼女の意見に従っておこう。食事もおいしそうだし、何よりもこんなに高そうなものを食べるのは初めてだ。
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