第10話 アルミリィア
『……私の声が聞こえますか? 勇者の称号を持つ者よ』
「ん?」
「どうした? 勇者アウィッツ」
「王様、なにか言いましたか?」
「いや、今呼んだだけだが?」
「えっ?」
月の間には、僕と王様しか居ないはずだ。というか、この部屋に入れるのが王様が言っていた通りなら、僕たち以外は居ないはずだ。
それなのに、なぜ僕たち以外の声が聞こえるんだ? それも、男の声じゃなくて女の子の声。若い、僕と同じぐらいの年頃の声だ。もちろん、これは推測でしかないけれどもそれにしたって、僕たち以外の声が聞こえるというのはかなり異常なことだ。
『勇者の称号を持つ者よ、私の声が聞こえますか?』
やっぱり聞こえる。どういうことだ? なんかの魔法なのか? 頭に音を送りつけるとかそういう感じのたちの悪い魔法か?
「さっきからどうしたのだ、勇者アウィッツ?」
「それがですね王様、さっきからなんか頭に声が聞こえてくるんですよ? 頭に直接っていうのが、的確な表現ですけれども」
「頭に直接声が届く? トーン系の魔法か? いや、しかし……外部の魔法が干渉できるとは思えんのだがなぁ」
「外部の魔法がこの部屋に干渉することはできないんですか?」
「あぁ、そうなのだ。この部屋にはどうやら、外部からの魔法をはじき返す陣が展開されているようなのだ」
それならば、もっとややこしくなってくる。外部からの魔法であればこの声も誰かのいたずらだと言うことになるからまだよかったけれども、原因が分からないとなると少し困ってくる。だって、原因が分からないやつに話し掛けるなんて怖すぎるだろ。
『……王の称号を持つ者よ。私の声が聞こえますか?』
「!! 私にも聞こえたぞ、勇者アウィッツ」
「本当ですか!? 今度のは私には聞こえませんでしたよ!」
どういうことだ? 次は王様に話しかけるなんて、大した野郎だ。もしかしたらさっき王様が言っていた陣がどうとかっていう話はガセで、本当は魔法が外部から干渉できるのかもしれない。そう考える方が、普通だろう。
「いったい…どういうことなんだ?」 王様が困った顔をして上を見上げている。
さっきまでゆっくりと降りていた月の武具と呼ばれるものは、なぜか上空で静止していてギリギリ背が届かない位置にあった。
「謎の声、止まってしまう月の武具。これは一体どういうことなのだ?」
さらに王様困り果ててしまう。ただ一番困っているのは、この僕だ。いきなりこんなところに連れてこられて、いきなり「お前は勇者だ!」と言われて、月の武具とかいうよくわからん武具が上から降りてくるのを見たと思ったら、謎の女の子の声が聞こえて、下りてきていた月の武具が上空で止まってしまう。もうさ、よく分かんないよ。自分が今何をするべきなのか。全く分からないよ。
『……おい』
「ん? 王様何か言いましたか?」
「いや、私は何も言っていないぞ? 君が言ったんでは無いのか?」
「違いますけど……さっきと違ってなんか低い声ですね」
もしこれがさっきと同じ謎の声だというんだったら、声色が変わりすぎていてるから驚きだ。
『おめぇらよぉ、理解力ねぇのか?』
「王様?」
「違うよ?」
『おい、話聞けよ』
「?」
「?」
『……馬鹿じゃねぇのか? お前らさ、ここまでさ月の武具がさ、永い眠りから覚めてさ、お前らにさ、話し掛けてやってるっていうのにさ、なんでそんな風に馬鹿なことしか言えねぇの?』
「月の武具?」
『そうだよ。月の武具だよ。正確には、
「アルミリィア? 七月の武具?」
『言っておくが、私はアルミリィアだがお前のエルマレル同様、アルミリィアも襲名せいで、私は大体12代目のアルミリィアだ。勘違いするなよ?』
「そうですか」
なんか、本当に良く分からないけれども、一つだけわかったことがある。
それは、月の武具の言葉遣いがひどく悪いということだ。
月の武具のことはまだ良く分からないけれども、これは家庭環境が影響しているのだロウか? というか、そもそも月の武具に家庭なんてあるのか?
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