第8話 称号

「名を、何というんだ?」

「あっ、僕の名前は――」

「彼の名前は、アウィッツ。アウィッツ=エルマレルです」

「そうか……エルマレルの末裔なのか」


僕は、僕自身で自分の名前を王様に伝えようとしたんだけれども、なぜか兵士の人が僕の名前を僕の言葉を遮っていってしまった。


「兵の者達は下がっていろ。私はこのものと話がある」

「しかし、陛下。何が起こるか分かりません! どうか一人でもいいですから兵士を置いてください!」

「私の声が聞こえぬのか?」

「……分かりました」


兵士の人はどうやら、俺と王様が二人っ気になるのを嫌がっているようだけれども、なんでなんだ?


兵士の人達は、王様に言われてから、エルメンターに乗りこんで下へと下がってしまった。



「さて、ようやく二人きりになれたな。勇者エルマレルの末裔アウィッツよ」

「はい、そうですね」

「先ほどの兵の無礼を、私に免じて許してくれ。彼らと手、君の話を邪魔しようとして邪魔したわけでは無いんだ。すべては私が、いや私の部下の大臣たちが勝手に決めた指示によって動いているだけなんだ」

「そうなんですか……それについては別に気にしてませんし、大丈夫です」

「それならよかった」


王様だから、ものすごく大きな態度を取られると思ったから、こんな風に無駄にした出に出てくると少し戸惑ってしまうな。


「ここは、王の間と言って私のために用意されている部屋なんだ」

「それなら、さっき兵士の人に聞きましたよ」

「そうか……。実はな、この部屋には、もっと言うとこの部屋のある階層にはもう一つだけ部屋が存在するんだ」

「へぇ……」

「勇者の末裔、アウィッツよ。なんだその薄い反応は」

「正直なところ、ものすごくどうでもいいんで」


この階層にもう一つ部屋があったとしても、僕にはものすごくどうでもいいことだ。


「そう言うな、勇者の末裔アウィッツよ。この階層には、王しか入れない部屋があるんだ」

「そうなんですか」

「しかし、実際には王以外、もう一つ。ある称号を持ち合わせている人間が入れるんだ」

「もう一人……ある称号ですか?」


ある称号? まぁ、なんとなく察しはつくけれどもあえて聞いておこう。


「そう……これから君もその称号を手に入れるんだよ。勇者の末裔、いや、勇者アウィッツよ」


やはり、その称号というのは勇者というものか。忘れていたよ、この王様がかなり変わった、頭の中がお花畑だった人だったということを。

もしかしたら兵士の人も、僕のことを心配して残ってくれようとしていたのかもしれないな。それだとしたら、王様には向かってでも残しておくべきだったよ。

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