第3話 母の言葉
だけれども、僕がそんな狂った王様のところへ行く義務はないし、ひどいことを言うようだけれどもこの兵士の人の生活なんて興味ない。
一言で言うと、全く僕は兵士の指示に従って王様のところへ行く気はなかった。
ただ、一人だけ。僕の気分を強制的に変えることが出来る人がいるんだ。
「兵士さんの家族が心配じゃないの、あんた?」
「えっ?」
敵というのはいつできるかわからない。たとえ家族でも敵になることがある。それを考えて生きていかねばいけないな。それを痛感させるような事だった。
母親が、僕に対して王様のところへ行けと言ってくるのだ。
「どうせ、あんた家にいたって何もすることないでしょ? 畑のほうはお父さんと私で何とかなるんだし、王様の命なんだから、逆らっちゃダメよ!」
「でもさ、あれだよ母さん? 勇者の末裔だとかそんなこと言ってるやばい王様なんだよ?」
「やばくても、王様は王様よ。もし、ここで行かないとか言ってみてごらんなさいよ。面倒な事になるかもしれないわよ?」
母親がこういう風に説得してくる時というのは、それすなわち強制ということになる。
だからこそ、僕は母親が遠回しに言っていることを実行しなければいけない。面倒だけれども、仕方がない。一番面倒なのは兵士から何かちょっかいを出されることじゃなくて、母親から小言を言われることだからな。
「……分かったよ。王様のところに行ってくるよ」
「良かった……夕飯までには帰ってくるのよ」
母親よ。王のところまでは馬に乗っても一日かかる。その約束は守れそうにないな。
「じゃあ、えぇっと、王のところへとお連れいたしますので、こちらへ来てください」
兵士の案内に従って、僕は馬車へと案内された。徴兵の時に乗った大型の馬車とは違って、外観は少し高級感のあるものだった。
「これ乗って、王のところへと参ります」
「はぁ……分かりました」
再度確認を受けて、僕は馬車に乗ることになった。
馬車の中は、これまた前に乗った馬車とは違い座り心地の良い椅子と、豪華な内装でかなり気分のいいものだった。こんな馬車に僕が乗っていいのか分からないけれども、乗せられてしまったんだから気にすることはない。
馬車の中で少しゆったりとしていると、馬車の中に兵士が乗り込んできた。そして少し疑ったような顔で「本当に君は勇者の末裔なんだよね?」と、言ってきた。
「いや、だからそれは伝説上の事だって言ってるじゃないですか」
「……まぁ、いいや」
兵士の人の気持ちに添えないようで悪いけれども、僕は勇者の末裔って呼ばれているけれども、本当に違うんだ。ただ、伝説として残っているだけだから。本当に小説みたいなものだよ。
それを信じちゃうんだから、王様も困ったものだよな。
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