第1話 始まり

べスタート王国では、魔王復活の知らせを受け早々とアルカラ帝国と休戦協定を結び、魔王討伐隊を結成させ、対処に当たった。しかし、その討伐隊というのは戦争にも参加できなかったような弱い人間で結成されていた軍隊だったので、すぐに魔物に敗退していった。

討伐隊といっても、セルムーン独自での隊だった。なので、ほかの国も討伐隊を結成させていて、討伐隊同士での争いも起きていた。


これでは、魔物を倒すことはおろか、ほかの国に侵略されてしまうという最悪の結末が王国の中にも流れていた。そして、その結末が戦いの中にもあった安定性のある平和の終結も意味することを誰もが予感していた。

そのことを察し、べスタート王国の国王べスタート四世は、家臣たちに、兵士たちに命をだしたのだった。


「この国には七人の勇者の末裔の一人がいる。その末裔を探し出し、魔王城へと向かわせるのだ!」


かくして、兵士たちは国中を勇者の末裔を探し回り、ついにたどり着いたのだった。



――― 


べスタート王国の北、エルマレル村。ここでは、勇者にまつわる話がある。


かつてこの村には、七人の勇者の一人であるエルマレルという男が住んでいた。このエルマレルという男は、魔王との戦いの後疲れ切った体を休めるためにここにやってきたとされている。そして、その男はまだその当時誰もいなかったこの地にあった温泉に入り疲れをいやしたとされている。その温泉を気に入った男は、この地に住むことに決め、人を集め一つの村を作った。そして、男がこの村で亡くなったあと、人々はその男を称え村の名前に男の名前を付けた。

そして、男はこの村で結婚し子供を残したとされている。


これが勇者にまつわる話である。


その話を聞きつけた兵士たちは、すぐにエルマレルの村に急行した。しかし、勇者にまつわる話というのは、村では伝説上の話とされていて村人に聞いても、分からないの一点張りだった。


ここもダメかと、兵士たちが最後に立ち寄ったのは、アルミルという男だった。

そして、アルミルが語ったのはこの村に勇者の末裔が確かにいるということと、その場所だった。


「確かに、このエルマレルには勇者の末裔が存在する。しかし、村人たちは勇者の事に受けた恩恵などを忘れ、勇者そのものを伝説化しようとしてしまい、結果として勇者の末裔自体も自らが勇者の末裔であることを忘れてしまったのだ。彼は今、この村の北の方に住んでいる。なに、まだまだ子供で家族と住んでいるが、必ずや魔王からこの世界を守ってくれるだろう」


兵士たちはその話を聞いた後急いで、その場所へと向かった。


「―――ついに始まるのか、正義の戦いが」

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