第3話急変

 夜。

 

 騒がしい一日も終わり、僕はパジャマでベッドの上にごろ寝していた。

 今日はなんだか疲れたし、さっきからずっと軽いめまいに襲われてる。

 早く寝たいな。


 ……けど、真陽奈が部屋に居座ってた。


 ベッドの横の床の上に寝そべって、ずっと携帯ゲームで遊んでる。もう十一時になるのに。


「お兄ちゃん、もう寝たいんだけど」

「寝ればー(棒」

 僕と色違いのパジャマを着てる真陽奈は、こっちに視線もよこさない。

「真陽奈ももう寝ないと、目の下のクマがもっと酷くなっちゃうぞ?」

「真陽奈のチャームポイントだからー。気にしないでー(棒」

 どうしたものか。

 ちょっと怪しげだけど、このまま寝ちゃってもいいかな?

 そう思ったとき、開けっ放しのドアからリサが顔を出してきた。

「真陽奈ちゃん、まだやってたの?」

 リサは髪をおろし、寝間着かわりのTシャツとスパッツ姿だ。

「真陽奈ちゃん、ちゃんと寝ないと成長ホルモンの分泌が狂っちゃうよ」

 そう言いながら部屋に入ってきて、リサは僕の椅子に腰かける。

「よく食べて、よく運動して、よく寝て、あたしみたいな……」

「小さい乳になってれば世話ないわー(棒」

「くっ、明人! アンタ、妹の躾はどうなってるわけっ?!」


 ん? んん? あれあれ、リサも居座っちゃったぞ?


 さらに部屋の窓がガラガラと開けられる。もちろん伊緒しかいない。

「起きてるよね……よっこらせと……」

 Tシャツとホットパンツの伊緒が入ってきた。


 僕はめまいと戦いつつ、途惑って言った。

「伊緒まで……。こんな夜更けに四人揃っちゃって、いったい何があるっての?」

 伊緒が固い表情をして、低い声で言う。

「わたし……なんだか……不安っていうのかな? 何か、何か良くない感じがするの……」


 部屋の中から朗らかさが消え、真陽奈のゲーム機はゲームオーバーを告げた。


 リサが目を伏せて静かに言う。

「夜になってはっきりしたけど、明人、アンタ、何かが薄くなってる……」


 僕には意味が分からない。

 めまいが酷くなってきた。

 くらくらする。


「お兄ちゃん!」

 真陽奈が飛び起きて僕にしがみついてくる。泣いていた。

「どこにも行かないで!」

「う……?!」

 僕は返事をしたかったけど、できなかった。


 力が抜け、視界は黒く閉ざされる。


 絞られ、溶かされ、引き伸ばされて……。


 まるで自分の存在が虚無に吸い込まれていくような感覚だ。


「明人っ!」

「明人くんっ!」

「お兄ちゃんっ!」


 僕は……。

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