再醒 ~動き出す運命~
心地よい香りが鼻腔をくすぐる。今までに感じたことのない感覚。
ライアは目を醒ます。見渡すと木々と花々の生い茂る絶景の中に立っていた。
記憶を辿るが、何も思い出せない。
出てくるのは自分の名前と年齢だけ。
何か大事な事を忘れてしまったような、奥底から滲み出る恐怖。
周囲の華やかさとは対照的に、背筋を凍らせる悪寒が容赦なく突き刺さる。
ーーーここは、どこだろう。
今は目的も、頼れる仲間も何も無い。
文字通り、空っぽな状態だ。
目の前が、真っ白に染まろうとしていた。
「ねぇ、あなたはここで何をしているの?」
不意に、可憐な声が森に響いた。振り向けば、長く艶やかな銀髪の少女が、もの珍しそうな顔でこちらを見つめている。
「お客さんなんて、久しぶりね」
少女はくすりと笑う。
「あなたは、誰?」
「俺は...」
そう言いかけて、ライアの意識はまた、暗闇に沈んで行く。
***
2人の出会いで、運命は動き出した。
ここから始まるのだ。
ライアの英雄譚が。
この物語は、世界を巡る少年の物語。
異端の伝説が、幕を開ける......!!
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