第4話「異常な愛情」2

 ごたごたが過ぎ去り、マジカルファーマシーはティンの要望で午後の営業を開始させていた。

 調合部屋ではシエルとリーナが調合の作業を開始している。ルミも装いを正して、カウンターに席を取って店番を開始する。大分気分が落ち着いた。まだ何が起こるか分からないので気を緩めるわけにもいかない。お客様への対応の傍ら、外の様子を窺っていた。

 カレンは落ち着いたティンのそばで看病するために、解散してからずっと部屋にこもりっきりだった。時々苦しそうに表情を歪ませる度、気が気ではなった。顔や腕など至るところに、包帯やガーゼが当てられている。見るに耐えない姿だった。

 何でこんなことになったんだろう。クレアは自分のことを慕っていると言って、半ば狙っている。自分の周りに居る親友たちが、狙われている……。

 ティンが大ケガをしてしまった。慕っていると言っているのに、どうしてそんなことをするんだろう。自分の魔力を増強してまで、彼女は自分の物にすると言ってた。異常なほどの渇仰かつごう。怖い……頭が混乱してきそうだ。

「ティン、私、怖いよ……。クレアさんは何を考えてるんだろう? ティンをこんなことまでして、どうして私を狙うのかな……」

「……ルミの話だとあの、病を治してくれたことに、甚く感動したみたいだわ。それで、カレンのことが好きになったそうよ」

「それなら、どうしてこんなことするの……!?」

「……カレンに異常な感情を持ってるのよ」

「そ、そんな……! そんなの好きって感情じゃない、間違ってるよ! 私のせいで、私のせいで皆が狙われてるじゃないっ!」

 途端に頭を抱え、俯いてしまう。頭を巡る考えに整理が追いつかない。叫び上げ、大粒の涙をボロボロと零し始める。ティンも居た堪れなかった。カレンを責めてまで、クレアは慕うと言うのか……。強い怒りを覚える。

「カレン、落ち着いて。大丈夫よ、安心しなさい。私もルミも、皆あんたを護るから」

「う、うぅ……」

 ティンは布団から包帯の巻かれた手を出し、カレンの頭を優しく撫でた。どうしてこうなったんだろう。一番そう思っているのは他でもないティンだった。カレンの生来の親友なのに、誰よりもカレンのことを想っているのに! こんなことで否定されたくはない。回復したらお返しの一つもしないと気がすまなかった。

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