第2話「邪魔ですわよ!」3

 一方、昼食を終わらせた一行は、リーナをパン屋に送り、午後の営業を開始させていた。ルミは再び店番に立ち、商品のチェックに入る。足りない物を陳列し、軽く掃き掃除をして準備は万端。

 カレンとシエルの二人は、工房で次の依頼の解消にかかり始めたようだ。何というか、午前中の件もあってか、カウンターに居ても背後が気になって仕方がない。……あんまり考えないほうが良いかもしれない。

 さて、ドアのプレートをオープンにかけ直すと、ティンも表に立って意気揚々と仁王立ちに臨戦態勢で構えた。

 彼女はかつて最年少で学園の教師をしていた秀才で、魔法の実力はお墨つきだ。実を言えば、学園に勤務する教師よりその能力は今でも凌駕りょうがしている。クレアがどう出ようが打ち返せる。

 ――誰もが、そう信じていた。

「あなた! 邪魔ですわよっ!!」

 ドォ――――――――――――ン!

 地震かと思った。とてつもない轟音とともに地が激震する。陳列棚から商品がこぼれ落ちた。しかし、今はそれを庇っている暇などなかった。

 その衝撃でグラスにヒビの入ったドアの向こう、土煙が上がっている。パラパラとレンガの破片が落ちる音が聞こえてきた。

 ――そこは、ティンが居た場所だ!

 慌ててドアに駆け寄り、打ち破るように開け放つ。店の前にはクレーターができ上がっていた。そしてその向こう、隣の店の前に、ティンは倒れこんでいた。

 何があったというのか。ルミは呆然として、そのクレーターから威力の大きさを痛感していた。それと同時に、そこに残るこの強い魔力。

 これほどの強力な魔力の持ち主が、ティン以外に居たとは……。


 ――戦慄せんりつの始まりだった。

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