第2話「邪魔ですわよ!」

第2話「邪魔ですわよ!」1

「カ、カレンちゃ~んっ!」

 翌日、朝食を済ませるとすぐ、隣のセイリー家に駆け込んでいた。

 リビングで朝食の片づけをしていたカレンにすがりつく。そんなルミの顔を見て、当のカレンもびっくりしてしまった。

「ル、ルミちゃん!? どうしたの、その顔!?」

 昨日のその後、配達はするものの、どこか寒気を帯びたように身を震わせる姿に、お客さんも何事かと思ったらしい。皆そそくさと物を受け取っては家へと引っ込んでいった。

 そして、昨晩はその悪夢にうなされ続け、結果そのくりくりとしたかわいい目の下に、重々しい黒いものができ上がっていた。それに、疲れた表情が元の可愛らしいルミちゃんスマイル(男性客がそう呼んでいるらしい)からかけ離れてしまっている。

「昨日、なんか変な女の子に目をつけられちゃったんだよ!」

「え? 変な女の子?」

「ルミ、それってもしかして、いつも店の前でうろついてるじゃない?」

 パジャマ姿でパンにかじりつくティンが、怪訝そうな表情でルミを見やる。どうやらティンも見覚えがあるらしい。それもそうだ、あんなあからさまに店の前を不審者紛いにうろつかれているわけだ、店番をしているティンからは丸見えに違いない。

「何のかしらねぇ? あれ。かなり迷惑だわ」

「昨日あの女の子、公園でファーマシーのお客さんに、買ったものを見せなさいって言ってたんだよ。それで注意しに行ったら……」

 そこまで言いかけたとき、再び昨日の悪寒が身を襲った。思わず再び身震いさせてカレンの腕に抱きついてしまう。恐怖に打ちひしがれるルミの頭を撫でながら、カレンはティンに目配せする。

「どちらにしろ、あのままほっといたらお店にも迷惑だわ。ルミにはお礼を言わなくちゃね。今日にもちゃんと言ってやらないと」

 パンを口に放り込むなり、手をパンパンとやる。席を立ったかと思えば準備運動のように体を動かし始めた。

「久しぶりに腕が鳴るわ」

「何するの?」

「もちろん、打ち払うのよ」

「あ、あんまり乱暴にならないようにね」

 右腕をぐるぐる回しながら奥へと消えていくティンにカレンが苦笑する。ティンが本気になったら恐ろしいことになる。でも、何とかしなければ、被害が出る可能性もある。目をつけられてしまっているわけだし、自分も何とかしなければならない。ルミは身震いを抑えつつ意を決した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る