金魚鉢12 恋敵~愛憎遊戯
「ねぇ、レーゲングスさん。私は土下座をしろって言ってるんじゃないの、足を
くすくすと
床に
その足で、ミーオはレーゲングスの
「お話があるって言うから何かと思ったら、フクスを返して欲しい? 何かいつもいつもあなたは同じことしか言わないね。これだから、女を知らない男はつまらないのよ」
「ほら、舐めて……。でないと、今度はフクスに会わせてあげないよ……」
レーゲングスはとっさにミーオを睨みつけていた。それでもミーオは
「あっ……。何か、舌使い上手くなってる……」
ミーオの甘い声が、耳朶にまとわりつく。その声を振り払うように、レーゲングスはミーオの柔らかな足に舌を
「凄い……こんなに……上手くなって……。本当に……お兄さんは童貞?」
フクスの言葉にレーゲングスは舌をとめる。顔をあげると、愉しげにこちらを見下ろす瑠璃色の眼があった。
「フクスを、抱いたことがあるんじゃないの?」
ミーオの唇から、吐息とともに言葉が
「あの子……抱いてあげるとね……凄く感度がいいの。まるで、誰かに抱かれていたことがあるみたいに……。本当、誰があの子をあんな
自身の体に指を這わせ、ミーオは言葉を続けてくる。ねっとりとしたその声音に、レーゲングスは言いようのない
「やめて、くれいないか……」
鋭く眼を細め、レーゲングスはミーオを
「たしかに、俺はフクスに冷たかった。でも俺はあの子を、そんな風に
フクスの笑顔が脳裏を過る。その笑顔を
でも今では、レーゲングスにとって彼女はかけがえのない妹なのだ。その妹を、
例え、相手がフクスを
「
すぅっとミーオの眼が細くなる。冷たい眼差しをレーゲングスに送りながら、ミーオは言葉を続けていた。
「フクスを嫌らしい眼で見てるくせに……。あの子を、本当は抱きたいんでしょ? だから私からフクスを取り上げたいんでしょ? あの子を捨てたくせして、手放したとたんそれが惜しくなっちゃったんでしょ? あなたは――」
「ふざけるなっ!」
「俺は、あの子を一度だってそんな眼で見たことはないっ。あの子は、たった一人の俺の妹だ。家族だ! だから取り戻したいだけだっ! それ以上の感情をフクスに抱いたことなんて、一度だってない! 俺のことはどう扱ってもいい! でも、フクスを侮辱することは、君でも許さない!!」
レーゲングスは怒号をミーオにぶつけていく。そんなレーゲングスを
色のない、不気味な眼で。その眼差しに、レーゲングスは
「言いたいことは、それだけ?」
レーゲングスを不思議そうに見つめながら、ミーオは首を傾げてみせる。眼を見開くレーゲングスを
「あなたが何を言ったって、もう
うっとりと眼を伏せ、ミーオは自身の体を愛しげに抱きしめてみせる。そんなミーオを見て、レーゲングスは
「君は、何を言ってるんだ?」
「そのままの意味よ、お兄さん……。だって。フクスは
「私が毎晩、フクスにしていることを私にしてくれるのなら、あの子を返してあげてもいいよ……。でも、それはあなたの知ってるフクスかしら……?」
ミーオが立ち上がる。彼女は、レーゲングスの頬を両手で包み込み、顔を
瑠璃色の眼が、レーゲングスの目の前にある。その眼が妖しい煌きを宿している。
「教えてあげる……。私とフクスが毎晩何をやっているのか? それでもあなたは、フクスを取り戻したがるのかしら?」
ふっくらとした唇が、レーゲングスのそれに
「やめろ……」
それでもレーゲングスは、喉から声を
「何よ、その態度……」
「俺にロリコン趣味はない。どうせなら、もう少し育ってから
不機嫌なミーオにレーゲングスは言い放つ。レーゲングスの視線は、ミーオの小さな胸に向けられていた。ミーオはレーゲングスの手を振り払い、立ち上がってみせる。
「
「童貞は余計だっ!」
レーゲングスに背を向け、ミーオはベッドへと移動していく。そんなミーオにレーゲングスは言葉を放っていた。
「でも、フクスはあなたに会いたくて仕方がないのよね……」
ぽすりとベッドに腰掛け、ミーオは弱々しく言葉を放ってみせた。
「ミーオ……?」
「あの人は、来てくれないのに……」
妹が、フクスがときおり見せていた眼と、よく似ていたから。
そっとレーゲングスは立ち上がり、ベッドに近づく。腰を
「なに?」
「なっ!?」
「優しくされるのは、
苦笑しながら、レーゲングスはミーオの頭を撫で続ける。猫耳を優しく
そっと猫耳の
「反則……。こんなの……。童貞のくせに……」
「童貞は余計だ……」
俯くミーオの顔は、
「じゃあ、そろそろ俺は行くよ。もう、遅いからな」
そっと
「また、来る?」
ぽつりと、そんな彼に頼りない言葉がかけられた。振り向くと、ミーオがこちらをじっと見つめている。潤んだ瑠璃色の眼が
「来るよ。フクスを取り戻すまで、何度でも。君が嫌がってもね……」
「最悪な人」
微笑むレーゲングスの言葉に、ミーオは笑顔を浮かべてみせた。
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