金魚鉢10 秘密~女狐暴露
「ジィジィ……。どうして来てくれなかったの、
カウチソファに寝そべるオーアが不満げに口を開く。彼女の頭を
「オーアは相変わらずじぃじの前だと、子供だなぁ」
「だってぇ、寂しいんだもん」
「もう、三十歳超えるじゃろうお前……」
「それとこれとは関係ない……。じぃじはじぃじなの。私はじぃじの可愛い孫なのっ!」
ぐるりと体をうつ伏せにし、オーアはラタバイの膝に顔を埋めてみせる。苦笑するラタバイがそんな彼女の頭を
そんな二人の様子を、こっそりと
「ミーオ……これって……」
「しぃ、バレちゃう…っ」
「でも……」
「見て、フクスっ……。これがオーアの本当の姿なの。普段は
扉の
ラタバイに甘えるオーアの姿は、普段の彼女からは想像もつかない。フクスの知っているオーアは抜け目がなく、常に勝気な笑顔を浮かべているやり手の女主人だ。
そのオーアが、小さな子供のようにラタバイの膝に顔を埋め
「法改正を
「オーアさんて……」
「フクスと一緒。もとは名家のお嬢様だけど、亜人ってだけで一族の恥さらし。それを、この
「ミーオ……」
ミーオの声が弱々しい。
彼女の様子が気になって、フクスは後方にいるミーオを見つめていた。 ミーオの眼が、じっと
またミーオは父親のことを考えているのだろうか?
「何してるんだ? お前たち……」
「兄さんっ? どうして、ここにっ」
「オーアさんに呼ばれて……。てっ、お前らまさか勝手に人の部屋を覗いてるんじゃないだろうなっ!?」
「ちっ、違うっ!」
きっとフクスを睨みつけ、レーゲングスは
「なんでいつもお前はそうなんだっ!? フクスっ! 小さいときだって、俺が友達とつるんでると勝手に部屋を覗いたりしてっ! あのとき人の部屋は勝手に
元来生真面目な兄は、こうなると手がつけられない。最近は長年のわだかまりが消えたせいか、昔のようにフクスを説教することもある。
「兄さん、これはっ!」
「言い訳は聞か――」
レーゲングスの大声を、大きな
ミーオの悲鳴が聞こえ、フクスはとっさに部屋の扉へと体を向けていた。
「何してる? お前ら……」
額に青筋を浮かべたオーアが、開け放たれた扉の向こう側に立っていた。その背後に、乾いた笑顔をしたラタバイが
「違うのっ! オーアこれはっ!」
「ミーオ!!」
「はいっ!」
オーアの
「仕事だ。フクスのお兄さんを、ここまで連れてきてくれ」
「えっ?」
「返事はっ……?」
「かしこまりました。オーアさま」
顔に無理やり笑みを浮かべ、ミーオはレーゲングスのもとへと駆け寄ってくる。彼女は、無言でレーゲングスの腕に両手を
「ミーオっ……」
「いいから、黙ってついてきて……」
「でも……」
「このままじゃ、私がオーアに殺されちゃう……」
「兄さん、行ってあげて……」
「あぁ……」
フクスに
--あとで部屋に来い。
声を出さず、オーアはフクスにそう告げる。フクスが怯えた顔をすると、彼女は笑みを深めてみせた。
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