金魚鉢9 高官~賢朗女狐
さまざまな色合いの猫耳をくねらせ、少女たちは回ってみせる。
その中央に、蒼い猫耳を
「ほぉ、いつ見ても
そんな彼女たちをベルベット張りの椅子に座った老人が、にこやかに眺めていた。ラオ・カーオ――
「おりょ、何がおかしいかなぁ。お
「すみません。ラタバイさま」
「爺と呼べと言ってるだろう。
不機嫌そうに彼は
ラタバイ。それがこの老人の名だ。
「だって、ラタバイ爺面白い過ぎです」
「敬語も硬っ苦しいの。
はぁっとため息をつき、ラタバイは心底悲しげな眼をフクスに向けてきた。
「あぁ! ラタバイ爺! フクス!! 私たちの
そんな2人に、大声で呼びかけるものがる。びっくりしてフクスが正面を向くと、ミーオが不満げに頬を
「やぁやぁごめんよぉ。新しい子はついつい
湯呑を机の上に起き、ラタバイは立ち上がってみせる。彼は横に立つフクスの肩を掴み、無理やり引き寄せてきた。
「ラタバイ爺っ?」
「フクスちゃんは柔らかいのぉ。儂の血の繋がった実の孫とは大違いじゃぁ。いいのぉ。若い子はいいのぉ」
「もう、くすぐったいですよ」
「本当、爺ってばコドモ」
ラタバイはフクスの頬を指でつついてくる。その感触がくすぐったくて、フクスは笑っていた。そんな2人を見て、ミーオも苦笑してみせる。
ラタバイは娼館にいる少女たちからとても慕われている。他の客と違い、彼は亜人の少女たちにとても優しい。
まるで、人間のようにフクスたち亜人を扱ってくれる。
それから、彼が好かれている理由はもう一つある。
「ラタバイさま。お話の準備が整いました」
後方にある両開きの扉へと視線をやる。黒いタイドレスに身を包んだオーアが、
「これは、これは、女主人さま。またぁいっそうお美しくなって……」
「お
そっとオーアはラタバイに頭をたれる。そんなオーアにラタバイは困惑したような眼差しを送ってみせた。
「どうか、されましたか?」
頭をあげたオーアが狐耳をピンとたて、ラタバイを見つめてくる。
「いや、なんでもないよ」
ラタバイはそんなオーアに笑ってみせた。そんな彼の笑顔が、どことなく悲しげなのは気のせいだろうか。
「
「あぁ、行くか……」
その笑みに促され、ラタバイは扉へと急いで近づいていく。そんなラタバイの手を優しく握り、オーアは部屋を出て行った。
「何か、オーアさんいつもと違う……」
扉が静かに閉められる。それと同時に、フクスはぽつりと言葉を吐き出していた。この遊郭の女主人であるオーアは誰に対してもどこか
相手は政界の
この金魚鉢の自治を守るためにも、オーアはラタバイに頭をさげなければいけないのだ。
「ねぇ、フクス……」
ぽんぽんと肩を叩かれ、フクスは我に返る。背後へと顔を向けると笑ったミーオと眼があった。ニヤリと目尻を釣り上げ、ミーオは得意げな笑みを浮かべている。
まるで英国の童話に出てくるチシャ猫のようだ。
「オーアの様子見に行ってみない? 楽しものが見られるよ」
フクスの狐耳に口を近づけ、ミーオは弾んで声でそう告げる。不思議そうにフクスが狐耳を動かすと、ミーオは楽しげに口の
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